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高木仁三郎市民科学基金
第22期(2023年度)国内枠調査研究助成
書類選考通過者の調査研究計画概要(受付番号順)


(下記は、それぞれの応募者の助成申込書から概要のみを転載したものです。)

応募者名 古賀 勇人さん 応募金額 40万円
テ ー マ コミュニティが主体となるエネルギー管理の概念化をめぐる研究
概  要

 市民風車など、コミュニティが主体となるエネルギー管理(Community-based energy governance;以降CEG)は、エネルギーシステムを分権的で民主的なものにすると想定される。一方で、現実のCEGにおいては、そうした変革的理念が必ずしも実現するとは限らず、経済的格差やジェンダー問題などの既存のエネルギーシステムの問題点を再生産するCEGも存在することが指摘されている。特に、CEGを促進する政策の下で、現実のCEGがどのような様相を呈するのか、変革的なCEGはいかにして変革的でありえるのか、を分析する必要がある。
 本研究は、日本における政策体系がどのようにしてCEGを概念化し位置づけてきたか(「上からの言説」)、対してエネルギーシステムの変革を希求するCEGの担い手はCEGをどのように概念化し位置づけてきたか(「市民の論理」)を調査し、それらの異同を明らかにする。それにより、変革的なCEGを推進するための運動およびそれらが掲げる政策論に必要な概念枠組みを提示することを目的としている。
 この目的を達成するために、まず批判的言説分析により「上からの言説」を明らかにする。そのうえで、福島県・長野県のCEGを事例に、半構造化インタビューとフォーカスグループインタビューを行うことで「市民の論理」を概念化する。さらにCEG関連のネットワーク組織や、自治体・政府関係者への半構造化インタビューを行うことでこれらの分析を補足する。
 本研究の成果は、国際学術雑誌への投稿に加え、協力者への個別報告、博士論文の日本語での書籍化、参加型の別プロジェクトにおける応用を通して、市民の運動の武器となるよう尽力する。


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応募者名 山室 真澄さん 応募金額 100万円
テ ー マ 水道水から摂取するネオニコチノイドが総摂取量に与える影響
概  要

 日本では水道水源となっている河川や湖沼などに、水田に散布された農薬が混入している。ネオニコチノイド系殺虫剤(以下、ネオニコ)の1種であるジノテフランの日本の水道水の基準値は600,000ng/Lだが、予防原則をとるEUでは個々の農薬の濃度は100ng/Lを超えてはならず、全農薬の合計濃度は500ng/Lを超えてはならない。EUと比べて基準値が桁違いに高い日本では、過去には基準値未満の除草剤が癌を引き起こしていた。
 水溶性のネオニコは作物に浸透し表面を洗っても除去できないことから、農作物からの摂取がほとんどであるとされ、水道水からの寄与は調べられていない。高木基金の助成をうけ2022年度に行った研究で、秋田市水道水はジノテフラン濃度が常時50ng/Lを超え、ピーク時に800ng/Lを超えた。一方、隣接する大潟村の水道水では5ng/L未満で推移した。
 ネオニコは神経毒なので脳に与える影響が懸念されるが、人の尿中ネオニコ濃度は脳中ネオニコ濃度と関係があるとして注目されている。本研究では気候条件や風土・慣習などが類似する秋田市と大潟村で尿中ネオニコとその代謝物の濃度を比較することで、水道水起源ネオニコの寄与を推定し、また総摂取量を海外の健康被害が疑われる事例と比較する。
 具体的には秋田市と大潟村で、できる限り有機栽培作物を摂取している住民10名程度に協力いただき、秋田市水道水でジノフラン濃度が最も高くなる8月に尿を採取し、ネオニコとその代謝物濃度を分析する、また尿採取日の3日前からの水道水中ネオニコ濃度も分析して比較・検討を行う。


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応募者名 日野 行介さん 応募金額 50万円
テ ー マ 策定プロセスの公文書開示による原発避難計画の実態解明
概  要

 東京電力福島原発事故の反省から原発30キロ圏内の自治体に避難計画の策定が求められることになった。1か所あたりの対象人口は数十万人に上り、計画の実効性の有無には国民・住民から高い関心が寄せられているが、避難計画は安全審査の対象外で、策定の基礎資料さえ公表されておらず、外部からの検証が困難な状態になっている。
 調査報道で培った情報公開請求の技術を使って基礎資料を入手し、原発再稼働を正当化するため実効性を度外視して策定されている実態を解明する。今回は30キロ圏内の人口が全国最多の約92万人で、避難計画の不備を理由にした初めての運転差し止め判決が出された東海第二原発を調査対象とする。
 解明した避難計画策定プロセスの全貌は書籍化して一般に広く伝えると共に、同原発の運転差し止めを求める訴訟の原告団や、再稼働の可否を問う住民投票の実施を目指す市民団体などにも共有する。また、入手した公文書はすべて電子ファイル(PDF)にして公開する。


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応募者名 ランポー二・キアラさん 応募金額 58万円
テ ー マ 福島原発事故と関連があると思われている児童の甲状腺がん事例にめぐる論争
概  要

 本研究のテーマは、2011年の福島原発事故後、福島県が同年10月から地元の医科大学を通じて実施したがん検診の結果、小児甲状腺がんが発生した事例をめぐって生まれた医学論争である。

 1) 第一の目的は、過剰診断説をめぐる疫学的議論の概要を説明することである。過剰診断説は、この地域の若い住民のがん発生率の上昇を正当化し、放射性降下物の公衆衛生への影響に関する懸念を払拭するために、当局が選んだ説明だ。UNCEARやWHOの裏付けがあるにもかかわらず、福島県立医科大学の研究計画を整然と分析すると、独立した専門家や市民科学者によって指摘されている盲点がある。それは、放射線被ばくと病態との関連性の可能性を維持しようとする試みで、診断患者への医療保険適用を主張し、検診手順の抑制に反対することが目的である。

 2) 第二の目的は、これらの患者の社会的経験とその12年間の変遷を明らかにすることである。まず、チェルノブイリ研究から提示された「生物学的市民権」の概念を用いて、臨床経過の経験が、治療を提供する当局に対する患者の姿勢にどのような影響を与えたか、この経験が患者をどのように孤立させたか、あるいは市民科学団体の仲介による新しい形の連帯への道を開いたかを調査する。


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応募者名 西舘 崇さん 応募金額 45万円
テ ー マ 使用済核燃料の中間貯蔵施を巡るむつ市政20年の展開と住民運動についての研究(2)
〜核燃税の導入と下北地域の新たな動向に注目して
概  要

 本研究は、使用済核燃料の中間貯蔵施設を巡る青森県むつ市政のあり方を住民側の立場から検討するものである。対象とする期間は、同施設の受け入れが表面化した2000年から現在までのおよそ20年間とするが、申請2年目となる今期では、前年度(第21期)の調査結果を踏まえ、特にむつ市における核燃税の導入過程と、周辺自治体の新たな動向に注目して検討を行う。
 むつ市は2022年9月、貯蔵施設に搬入される使用済み核燃料に課す「核燃料税」の導入を正式に決定した。宮下市長(当時)は同税をむつ市の将来を持続可能なものとする「最強のカード」と表現したが、本当にそうだろうか。そもそも中間貯蔵のための前提が整っていない。再処理事業は行き詰まった状態であり、その一方で中間貯蔵後の搬出先も決まっていないのだ。施設はまたテロなどの標的にもなるが、その対策も十分とは言えない。地域住民からの理解についても疑問が残る。このような中、本研究では前年同様に現地を訪れ、地域住民の声を実際に聞きながら、むつ市政の原子力政策を批判的に検討する。今期の調査ではまた、むつ市を含む下北地域の新たな動きを視野に入れることで、むつ市政を県全体の原子力行政の中に位置付けていくことを試みる。新たな動きの代表例は、風間浦村による除染土の受入検討表明であり、また地方統一選や知事選を経た青森県政による原子力行政のあり方である。
 現政権による原発回帰政策が進展する中、青森県下北半島における原子力政策とその背景にある論理を明らかにすることを通して、持続可能な本来の地域のあり方と、住民の生活と命を守るための方策について考えたい。


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グループ名
代表者名
もんべつ海の学校
村井 克詞さん
応募金額 100万円
テ ー マ 紋別港における藻場分布と生物の蝟集状況調査
概  要

[目的] 紋別港周辺の藻場分布およびその周辺に蝟集する魚類の状況を把握すること
[背景] 生物の生息環境としての港湾構造物の役割(港湾が疑似岩礁として機能し、藻場が生物多様性を育むなど)や北半球で凍る海の南限であること、夏季には宗谷暖流、冬季にはオホーツク低塩分水の影響を受け生物相も大きく変化し、1〜3月には流氷に覆われます。
[調査] 本事業では、水中ドローンを用いて海面下の海藻の繁茂状況や魚類の蝟集状況を調査して、生物の多様性や藻場分布から紋別港におけるブルーカーボン量の推算を行いたいと考えています。防波堤から離れた砂泥域においても調査を行い藻場における生物多様性も評価します。
 平面的な藻場分布は、空撮を行います(2022 年7 月に1 回目を実施)。
[成果]「もんべつ海の学校」では、『海洋調査のプロフェッショナルが教える海洋教室』をコンセプトに大学生、高校生を誘致して「海の学び」を基軸とした参加体験型フィールド学習を企画提案しています。
 独自調査や解析を行い、常に最新の知見と情報を「海からのメッセージ」として伝えたいと考えています。地域で開催される北方圏国際シンポジウムなどで成果の発表を予定しています。


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グループ名
代表者名
子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会
南波 久さん
応募金額 100万円
テ ー マ 小さな町に起った大きな課題を、道内・道外の議論としていくために
概  要

 2020年8月13日の北海道新聞第一面において、寿都町の片岡春雄町長が高レベル放射性廃棄物最終処分場の文献調査への応募を考えていると報じられた。その報道によると、国から核のゴミの深地層処分方法とその進め方について説明を受け、第一段階の文献調査応募で最大20億円、第二段階の概要調査の受け入れで70億円、合計90億円の交付金を受けられるので、町財政の将来を見据えて応募する考えだという、驚くべき内容であった。その後、2020年9月3日の鈴木直道北海道知事との会談においては、道の「核抜き条例」に反すると主張する鈴木知事に対して、町長は最終段階の精密調査まで進めたいとの意向を表明し、会談は平行線で終わった。
 私たちが暮らす寿都町は、人口約2700人の小さな町である。この小さな町に暮らす私たちは、国の原子力の政策と片岡町長の独断により、国レベル国際レベルで検討すべき大きな課題を突き付けられた。この課題は私たちだけで解決できない課題であり、また私たちだけで話し合うべき課題ではないと考えている。これは寿都全町民、北海道民、国民全体ひいては国際的な課題であり、目先の交付金を得るという考え方ではない議論が必要である。そのような場を作りたいと考えているが、既に寿都町内ではと町民同士の分断が起きているのが現状である。私たちは、この分断を少しでも和らげ、本当の対話の場を作るために、土を耕すような活動をしたいと考えた。何も話さない、話したくない、話せないと考える寿都町民の心と対話を引き出す場づくりを行いたいと考えている。


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グループ名
代表者名
木質バイオマス発電チェック市民会議
川端 眞由美さん
応募金額 20万円
テ ー マ リネン検査の継続で燃料材のトレーサビリティーを問う
概  要

 市民は、東御市が誘致した清水建設鰍フ子会社・信州ウッドパワー(株)の木質バイオマス発電所の環境汚染を監視するため、2019年11月以来毎年夏冬年2回のリネン吸着法検査を実施してきた。

 市は毎月の焼却灰の放射能測定と年1回の羽毛山(はけやま)区大気状態検査を実施し、ホームページで公表してきた。
 当初から燃料材の確保が課題だった信州ウッドパワー(株)は、昨年春の社長交代後も燃料材不足が続き、10月からひと月ほど稼働を停止した。
 市は9月、これまでの羽毛山区大気状態検査で特に問題となる結果は出ていないので今後調査は中断すると地元報告会で伝えた。羽毛山区は区民の不安がある以上従来通り検査を実施してほしいと市長に請願書を提出し、今年は実施することになったが今後については保証していない。
 再稼働後、信州ウッドパワー(株)の敷地には大量の燃料材が運び込まれているが、約束したトレーサビリティーは公表していない。
 環境省は福島原発事故の除染による放射能汚染物質や、除染対象ではない汚染林をバイオマス発電で燃やし、「減容化」「有効利用」する方針で、今後放射能汚染被害が全国に拡大する恐れがある。
 FITで20年間利益が保証されている信州ウッドパワー鰍ェ今後どのように燃料材を確保するのか。
 わたしたち市民は、粘り強くリネン吸着法検査を継続することで、市民に説明せずに企業誘致した東御市に対し、市民の不安がある以上羽毛山区大気状態検査と焼却灰の放射能濃度の測定を継続し、データを公表するよう働きかけていきたい。 


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応募者名 平 春来里さん 応募金額 36万円
テ ー マ 風力発電施設に関する共同事実確認実施に向けた騒音と景観に関する住民実態調査
概  要

【調査の目的】
 本調査は、既存の風力発電施設のモニタリング段階における将来的な共同事実確認の実施にむけて、住民、専門家、事業者の双方向コミュニケーションの経路を形成するため、とくに紛争化しやすい騒音と景観について既存の風力発電施設周辺に居住する住民を対象とした実態調査を行うものである。ステークホルダーが問題の不確実性に合意し、協働関係を築くための情報提供のあり方を検討すること、そして得られた結果を専門家と事業者に共有することで共同事実確認に向けた協働関係の構築を図ることを目的としている。
【調査内容】
 本調査は3つの段階に分けて実施する。
1.風力発電の騒音と景観に関する文献のシステマティックレビューの実施
2.騒音と景観に関する住民へのインタビュー調査
3.騒音と景観に関する住民への質問紙調査


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グループ名
代表者名
比留間運送伊奈平産廃処理工場調査団
佐藤 健朗さん
応募金額100万円
テ ー マ 産業廃棄物処理工場から排出される有害物質による地域住民への健康リスク
概  要

 廃プラスチック類をはじめ木くずや紙くず、ゴムくずなどの産業廃棄物及び一般廃棄物の破砕や焼却などの中間処理を行っている廃棄物処理工場から排出されていると思われる有害物質によって、隣接する事業所及び周辺民家の居住環境が汚染され、健康被害の発生が見られることから、その汚染の実態把握と健康被害発生の原因と将来的な健康に及ぼすリスクについて把握することを目的として調査を行う。


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グループ名
代表者名
沖縄京都PFAS研究グループ
徳田 安春さん
応募金額40万円
テ ー マ 沖縄県におけるPFAS曝露と腎癌・精巣癌の関連性
概  要

 PFOS、PFOA、PFNAなどのPerfluoroalkyl substances (PFAS)への曝露と発癌性との関連性を示す研究はいくつかある。PFAS曝露は日本人においてすでに広がっているが、血中PFAS濃度と発癌性の関連について日本人を対象にした研究はまだない。PFASは地域住民の生活にとって重要な飲料水に含まれる残留性環境汚染物質であり、健康影響を調べることは大切である。中でも、悪性腫瘍の発生数は近年増加しており、この物質の関与を調査することで、曝露を減らすなどの予防対策をとる必要性が明らかになる。今回の研究は、症例対照研究を行い、外来受診時に得られた採血検体を用いて、腎癌と精巣癌の患者の血中PFAS濃度の測定を行う。データ解析については、多変量ロジスティック回帰モデル分析を行い、交絡因子を調整した上で、PFAS血中濃度と癌の既往との関連を解析する。PFAS血中濃度と発癌性との関連を認めた際には、PFAS曝露を最小限にするための政策介入を行うよう自治体や政府等へ働きかけを行うエビデンスとして研究結果を活用する。


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応募者名 原田 浩二さん 応募金額45万円
テ ー マ 市民によるPFAS調査のための化学分析基盤の構築
概  要

 フッ素原子を含む有機化合物のうち、難分解性を示すフッ素化アルキル化合物PFASによる環境汚染、ヒト曝露について近年、注目が高まっている。泡消火剤の使用があった在日米軍基地、自衛隊、空港周辺地域、またフッ素樹脂製造工場の近隣で地下水汚染を引き起こし、その結果、飲料水や農作物の汚染から地域住民の人体へ蓄積が見られており、健康リスクが示唆される濃度で検出されている。沖縄県、東京都多摩地域、大阪府摂津市が代表的な事例となる。しかしながら、まだ上記の地域においてしか血液検査などは実施されていない。PFASは全国的に使用されてきており、汚染の実態が明らかにされていない地域が数多く残されている。
 PFASの化学分析は一定の方法が確立してきているが、実施できる機関は限られており、営利機関への委託費用も高額である。市民自らPFASの実態を明らかにするためにはPFAS分析を低廉で行うことができる機関を増やすことである。申請者は従来の液体クロマトグラフィー質量分析計による方法に代わり、汎用のガスクロマトグラフィー質量分析計でもPFAS分析が実施できることを発表しており、この方法で簡便、低廉に分析ができることを示している。この調査研究では市民が主導するPFAS汚染が懸念される地域での血液検査を支援し、また営利を目的としない機関へのPFAS分析法の技術移転を進め、国内のネットワークで調査、分析の経験を共有する仕組みを目指す。


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グループ名
代表者名
原発報道・検証室裁判文書・政府事故調文書アーカイブプロジェクト
添田 孝史さん
応募金額30万円
テ ー マ 東電原発事故の政府事故調が未公開にしている文書から重要な情報を開示させる
概  要

 東京電力が引き起こした福島第一原発事故について、政府の事故調査委員会は膨大な資料を集めたが、ほとんど公開されていない。2018年以降、事故をめぐる裁判の中で、検察側は東電や国の責任に関連した数多くの証拠を初めて公開した。その過程で、政府事故調が収集していたのに報告書に記載せず、闇に葬ろうとしていた資料があることがわかった。事故の原因を探り、さらに事故調の検証が正しかったのか、政府がまだ隠していることはないのかを確かめるために、政府事故調の文書を開示させ、読み解くことが必要とされている。隠された事実を新たに見つけることができれば、原因究明だけでなく、事故調査の欺瞞をより明確にできる。
 政府や国会の事故調による調査や、検察の捜査はすでに終了している。大学などでも取り組んでいるところはなく、市民科学やジャーナリズムだけが問題解明の役割を果たせる。本研究では、政府事故調資料を開示請求して集め、すでに公開しているデータベース(DB)に追加する。これまでにも、このDBを活用して元日本地震学会長が著作を発表したり、報道でも引用されたりしており、DBの拡充によりさらに有効な利用が増えることが期待できる。
 原発のリスク想定をなぜ間違えたのか、検証で隠そうとした事実は何か、その背景や構図を多くの人の目で読み解いていくことは、原発回帰に舵を取った政府の原子力政策を監視するためにも重要な課題だと考えられる。


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グループ名
代表者名
みんなのデータサイト
藤田 康元さん
応募金額50万円
テ ー マ 実践・市民放射能測定室の作り方 〜市民が培った確かな測定技術の継承を目指して〜
概  要

 福島原発事故の後、市民による空間線量測定がすぐに始まった。引き続いて、食品や住環境の汚染の実態を知るため、様々なバックグラウンドを持つ人々が集まり、放射能測定に必要な機器の選定調達・測定技術の習得を経て、日本全国で市民測定室が立ち上がった。放射能測定の対象が公的測定マニュアルに記載のない身の周りのあらゆるものに及んだため、試料調整・測定方法を工夫し正確な測定結果を得るため試行錯誤を経てノウハウを蓄積する必要があった。この貴重な測定室立ち上げと測定のノウハウは、市民が広く共有できるものとしてまとめられていない。特に市民が培った確かな測定技術の継承は市民測定室の活動の維持・向上を図る上で重要であるだけでなく、次の重大事故に際して市民が迅速に測定体制を立ち上げるためにも不可欠である。以前より、測定室の作り方を教えて欲しいという海外からの要望も来ている。本調査研究はこの課題に応えるものであり、市民科学としての重要性は明らかだと言える。本調査研究では、市民測定室を対象に、立ち上げ時から現在までの諸課題について尋ねる質問票調査とインタビュー調査を行い総合的に実情を分析する。この分析を踏まえ、測定技術のノウハウを網羅した測定ガイドをまとめる。


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グループ名
代表者名
外環振動・低周波音調査会
上田 昌文さん
応募金額50万円
テ ー マ 外環道大深度工事で発生した振動・騒音・低周波音による被害の実態把握とそれへの対策に関する調査
概  要

 2020年10月18日に調布市で起こった東京外環道トンネル工事に伴う陥没事故を機に、周辺地域では被害と補償をめぐって、さらにはトンネル工事の継続や地盤改良工事の実施の可否やそのリスクをめぐって、事業者(国土交通省、NEXCO東日本、NEXCO中日本)が、これまでに住民が納得できる調査や情報提供を行ってこなかったことからくる様々な問題が噴出している。2021年及び2022年の高木基金の助成を受けて、市民科学研究室が被害者住民らと共同で「外環振動・低周波音調査会」を立ち上げ、地盤・地質、振動・騒音、そして環境センシングの分野の専門家の協力を取り付けつつ、振動・低周波音による健康被害(2021年12月11日に報告会)ならびに建物損壊(2022年7月に第一次、2023年5月に第二次報告会)の実態調査を実施した。これらと並行して、地下工事から発生する振動を常時モニタリングする必要を痛感し、簡易な振動計(既存の振動加速度センサーのアプリケーションを改良して中古iPhoneに装備したもの)を用いてデータを自動記録するシステムを開発し、シールドマシンによる掘進が進行・再開されているエリア(外環道の練馬、三鷹、世田谷エリア、横浜環状南線エリア、リニア中央新幹線エリア)で計測を続けている。今後は、調布エリアで2023年夏から長期にわたって行われるだろう地盤改良工事、ならびに、上記各エリアでの地下掘進での、振動・騒音・低周波音に起因する種々の被害を、各エリアの住民と連携しつつ未然に防ぐことが主たる目標となる。その一環として、これまで2年間に蓄積した地盤や工法やモニタリングなどに関する知見と本調査で示した市民科学的手法を、広く全国の住民に提供するために、「シールドマシン地下工事 リスク情報サイト」を構築する。


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グループ名
代表者名
太平洋核被災支援センター
M田 郁夫さん
応募金額50万円
テ ー マ 太平洋核実験被災の青少年向け学習資料について調査・研究し、青少年参加の学習活動を支援する。
概  要

 太平洋水爆実験による被災の実態解明にこれまで取り組んできた。核兵器禁止条約批准を視野に入れ、太平洋核実験被災の青少年向け学習資料の調査・研究が求められている。
 これまでに作成してきたDVD「ビキニの海は忘れない」・「核被災と核兵器禁止条約」、紙芝居「ビキニの海のねがい」、写真記録「核被災に向き合う高校生たち」学習資料などが、どのように活用され、改善すべき課題について高知県と国内外の研究者と協力して調査・研究を進める。
 今年度は、核実験被災国のネットワークづくりを進め、核問題の学習や平和運動の継承について、若い世代に向けた教材編集に取り組む。こうした研究と活動を来年5月の「ビキニデーin高知」に集約する。


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グループ名
代表者名
清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会
木本 雅己さん
応募金額100万円
テ ー マ 気候危機時代の豪雨に対応しうる川づくり・流域社会づくりに向けた基礎的研究
―球磨川豪雨災害調査の「中間報告」説明会を通じて―
概  要

 本研究では、2020年7月4日球磨川流域豪雨災害における被害拡大要因とメカニズムの実態解明について、これまで申請者らが取り組んできた人吉市を中心とした現地調査の成果を“中間報告”と位置づけ、地区別説明会を実施し議論の場をつくることを通じて、より深い実態解明へと発展させることを試みる。くわえて、球磨村・芦北町・旧坂本村の中流域の被災者らとの交流会の中で“中間報告”を共有し、より広域で見た際の川づくり・流域社会づくりに不可欠な視点を析出する。
 国交省と熊本県による豪雨災害検証の不備を受け、申請者らは2020年10月頃に調査に着手、人吉市内の犠牲者20名中19名の要因と時刻を明らかにし、国と県が進めようとしていた河川整備では対応できず、より詳細な検証が求められるとして、共同検証の実施を求め続けてきた。と同時に、調査を通じて、被災した申請者ら自身が持つ個々の体験が、発災メカニズムの内にどう位置付けられるのか、理解を深めてきた。災害調査は、被災した者にとって、気候危機時代の豪雨災害がどのようなものか理解を促すかたちで作用すると同時に、こうした時代にあっての川づくり・流域社会づくりにはどのような視点が重要であるかを、示唆するものでもあった。
 国は2015年以降、気候変動を踏まえた河川整備の在り方を検討し、2021年には流域治水関連法が成立した。しかし球磨川流域で生じている事象を見る限り、気候危機時代の豪雨に対応しているとは言い難い。本研究を通じて、気候危機時代に対応しうる川の保全を重視した川づくり・流域社会づくりの要点を、明らかにしたい。


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グループ名
代表者名
遺伝子組換え食品を考える中部の会
河田 昌東さん
応募金額50万円
テ ー マ 運送路沿道におけるこぼれ落ち遺伝子組み換えナタネの実態調査
概  要

 本調査・研究では、輸入ナタネの運搬経路である国道23号沿道(三重県四日市市-松阪市)における遺伝子組み換え(GM)ナタネおよび、GMナタネとの交雑が懸念されているアブラナ科雑草(イヌカキネガラシ・ハタザオガラシなど)の自生状況を定期的に調査し、なるべく多くの検体を検査することによって自生ナタネの分布状況・GM率等を把握する。
 当会から製油会社へのはたらきかけによって四日市港穀物サイロの出庫ユニットにエアシャワーが設置されており、運送車両へのナタネの付着が軽減されていることが予測されているが、この調査によってその効果を把握する。
 また、新型コロナ感染対策のために大規模抜き取り調査が数年にわたり実施できなかったが、その影響についても考察する。
 これらの調査・研究結果を当会のウェブサイトやさまざまな報告会での公開を通じて一般市民と共有し、当該地域でのGMナタネに関する啓発運動、自生拡散防止・交雑防止活動に役立てる。
 さらに、この調査・研究結果を地方自治体および環境省・農林水産省等へ提出し、遺伝子組み換え作物の与える影響を提示し、カルタヘナ国内法の改正への足がかりをつくる。


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