古賀 勇人 さん | ||
http://researchmap.jp/hayato_koga | ||
30万円 |
2023年5月の助成申込書から
市民風車など、コミュニティが主体となるエネルギー管理(Community-based energy governance;以降CEG)は、エネルギーシステムを分権的で民主的なものにすると想定される。一方で、現実のCEGにおいては、そうした変革的理念が必ずしも実現するとは限らず、経済的格差やジェンダー問題などの既存のエネルギーシステムの問題点を再生産するCEGも存在することが指摘されている。特に、CEGを促進する政策の下で、現実のCEGがどのような様相を呈するのか、変革的なCEGはいかにして変革的でありえるのか、を分析する必要がある。
本研究は、日本における政策体系がどのようにしてCEGを概念化し位置づけてきたか(「上からの言説」)、対してエネルギーシステムの変革を希求するCEGの担い手はCEGをどのように概念化し位置づけてきたか(「市民の論理」)を調査し、それらの異同を明らかにする。それにより、変革的なCEGを推進するための運動およびそれらが掲げる政策論に必要な概念枠組みを提示することを目的としている。
この目的を達成するために、まず批判的言説分析により「上からの言説」を明らかにする。そのうえで、福島県・長野県のCEGを事例に、半構造化インタビューとフォーカスグループインタビューを行うことで「市民の論理」を概念化する。さらにCEG関連のネットワーク組織や、自治体・政府関係者への半構造化インタビューを行うことでこれらの分析を補足する。
本研究の成果は、国際学術雑誌への投稿に加え、協力者への個別報告、博士論文の日本語での書籍化、参加型の別プロジェクトにおける応用を通して、市民の運動の武器となるよう尽力する。
本研究の目的は、コミュニティが主体となるエネルギー管理(Community-based energy governance: 以降CEG)が日本においてどのような様相を呈するのか、変革的なCEG はいかにして変革的でありえるのかを分析することです。
具体的には、日本において、事実上CEG を支援してきた政策とエネルギーシステムの変革を希求するCEG とで、CEGの概念化においてどのような異動があったのかを明らかにします。それにより、CEG がそれぞれの主体にどのように理解され、どのような対抗関係があるのかを分析することで、CEG が真に変革的であり得るための武器となる枠組みを提供することを狙いに据えています。
これまで、日本におけるCEG 組織の構成員、ネットワーク組織や関連NGO/NPO の構成員、研究者に対して、対面あるいはオンラインでのインタビューを進めてきました。それぞれ1 時間から3 時間の間で、これまでのところ38 人の方々にお時間をいただくことができました。並行して、政策との関係性についても継続的に分析を行っています。また、2024年1月中旬から2月中旬にかけて日本に滞在し、福島、千葉、宮崎にて聞き取り調査を行うことを予定しています。
中間的な成果の報告の場として、Energy Geography Conference of the American Association of Geographers(査読あり)にて、研究報告を行いました。4月には、American Association of Geographers Annual Conference にてさらなる成果の報告を予定しています。
なお、研究手法に一部変更があります。市民の概念化に関して、申請書においては、福島・長野の事例のみを対象として挙げていました。一方で、研究を進めながら指導教官グループとも相談をするうちに、福島・長野という代表的な事例としての選択は自明ではなく、時代的・地理的な差異を含めて全国的に調べる方が良いということになりました。そのため、スノーボールサンプリングの手法を用いた全国各地の組織への半構造化インタビューを手法として採用することに変更しました。これに応じて、実際の訪問調査先も追加し、宮崎県五ヶ瀬、千葉県匝瑳市のCEG へも調査をすることになりました。
本研究の目的は、コミュニティが主体となるエネルギー管理(Community-based energy governance: 以降CEG)が日本においてどのような様相を呈するのか、変革的なCEGはいかにして変革的でありえるのかを分析することにある。具体的には、日本において、制度・政策とエネルギーシステムの変革を希求するCEGとで、CEGの概念化においてどのような異動があったのかを明らかにすることを目的とした。それにより、CEGがそれぞれの主体にどのように理解され、どのような対抗関係があるのかを分析することで、CEGが真に変革的であり得るための武器となる枠組みを提供することを狙いに据えた。
手法としては、日本におけるCEG組織の担い手、ネットワーク組織や関連NGO/NPOの構成員、研究者に対して、対面あるいはオンラインでのインタビューを進めてきた。そのうち、長野県、福島県、神奈川県、千葉県、宮崎県のCEGについては、詳細な現地調査を行った。
具体的な成果としては、3本の学術論文を予定している。1本目は、営農型太陽光発電を用いたCEGを「エネルギー民主主義」という観点から分析した論文である。この論文では、エネルギー管理の民主化により一層寄与すると想定される営農型太陽光発電が、一方で民主化を推し進めるものの、制度との関係であらたな閉鎖的特徴をもたらしうる可能性を指摘した。2本目は、制度・政策環境の変化とCEGにおける変革的可能性の担い手の認識の関係性を分析するものである。3本目は、福島原子力発電事故とその後の福島におけるCEGにおける変革的取り組みの分析である。