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外環道大深度工事で発生した振動・騒音・低周波音による 被害の実態把握とそれへの対策に関する調査



グループ名 外環振動・低周波音調査会
代表者氏名 上田 昌文 さん
URL
助成金額 50万円

開発した簡易振動計で得たシールドマシン由来の振動データの一部

トンネル工事により生じたブロック塀の損傷

研究の概要

2022年5月の助成申込書から
 2020年10月18日に調布市で起こった、東京外環道トンネル工事に伴う陥没事故を機に、周辺地域では被害と補償をめぐって、さらには今後の工事の継続をめぐって、事業者(国土交通省、NEXCO東日本、NEXCO中日本)が、これまでに住民が納得できる調査や情報提供を行ってこなかったことからくる様々な問題が噴出している。2021年の高木基金の助成を受けて、市民科学研究室が被害者住民らと共同で「外環振動・低周波音調査会」を立ち上げ、地盤・地質、振動・騒音、そして環境センシングの分野の専門家の協力を取り付けつつ、まず、振動・低周波音被害の実態調査を実施した。その結果をふまえて、シールドマシンによる掘進が進行・再開されているエリア(外環道の練馬エリア、横浜環状南線エリアなど)を含めて、地下工事から発生する振動を常時モニタリングする必要を痛感し、簡易な振動計(既存の振動加速度センサーのアプリケーションを改良して中古iPhoneに装備したもの)を、個々の住宅に設置して、Wi-Fiを用いてデータを自動記録するシステムを開発した。さらに、建物に生じた損壊について、事業者はトンネル直上とその周辺のみ限定して個別に補修するという対応しか行っていないが、これでは建物被害の全貌は把握できない。そこで調査会では4月から1件1件を巡りながらその損壊の状態を記録していく活動に着手した。今後、リニア中央新幹線を含めて大深度地下工事で発生する恐れのある、振動・低周波音に起因する種々の被害を防ぐためには、各エリアの住民が連携をとりつつ、事業者らにこうした調査を行わせるよう主導しなければならないが、本調査はその必要性と具体的手法を科学的データによって明示するものとなる。

中間報告

中間報告より
 2020年10月18日に調布市で起こった、外環道トンネル工事に伴って発生した陥没事故では、トンネル直上及びその周辺地域において、住民の間に騒音・振動・低周波音による健康被害が生じ、また建物にも様々な損壊が生じていることが、高木基金の第20期並びに第21期の助成を受けての調査で明らかになりました。地元住民と市民科学研究室とが「外環振動・低周波音調査会」を結成し、毎月3回ほどの定例会を持ちながら、2021年8月以来、現地での調査を続けています。  20期(前年度)では、25名の被害住民に対して詳細な聞き取り調査を実施し、(1)シールドマシン工事の進行の時期と振動・低周波音の体感ならびに体調悪化の時期的な相関はきわめて高いこと、(2)25名(女性18名、男性7名)のうち、何らかの大きなストレスや精神苦痛を覚えた者が15名、うち何らかの症状を発症した者が13名、そしてそのうちの6名(すべて女性)が工事停止後も過敏化した症状に今なお苦しんでいること、がわかりました。  今期は、2022年12月まで合計20回、調布市若葉町1丁目、東つつじケ丘2丁目、東つつじケ丘3丁目、入間町から世田谷区成城にいたる、トンネル直上エリアとその周辺の合計314軒を対象に建物調査を実施しました。総計2,600枚に及ぶ写真とスケッチをもとに、Google Street Viewでの事故前の写真との照合などを経て、少なくとも(3)工事前にはなかった損傷が工事後に発生したと確定できた事例32件、(4)工事によると強く疑われる地面の沈下・隆起の影響が出ていると判定できる事例が36件、あることがわかりました。  これらのうちには、事業者が恣意的に定めた「保証対象エリア」の範囲外にある家屋もあることが判明しています。現在、こうした被害が地下でのいかなる稼働状況に由来するものかを特定すべく、また、被害を未然に防ぐ対策の具体化に向けて、調布市エリアに限らず、練馬区、三鷹市(そしてリニア中央新幹線トンネルエリア)を含む広い範囲を対象に、自ら開発したiPhone振動計( 開発したアプリを入れて家屋内で発生する1週間の振動を詳細に記録できる)による振動モニタリングのネットワークを拡大しようとしています。  とりわけ陥没エリアで今春から予定されている大規模で長期間の「地盤改良工事」の影響が懸念されるため、国交省並びに事業者(NEXCO東日本)に対して、技術面の詳細を含めた情報公開と実効性のある対策の提示を求めています。

結果・成果

2023年8月の完了報告より
 市民科学研究室は、2020年10月18日に調布市で起こった、東京外環道トンネル工事に伴って発生した陥没事故の被害実態の究明と問題の解決に向けて、地元住民と「外環振動・低周波音調査会」を結成し、毎月3回ほどの定例会を持ちながら、現地での調査を続けています。巨大なシールドマシンによる地下40メートルでの掘進工事によって、微振動と聴覚範囲外の周波数を含むであろう低周波音が長期にわたって発生しましたが、その双方に、地上の住民らが持続的に(平均して1カ月弱)曝露しました。聞き取り対象25名(女性18名、男性7名)のうち何らかの大きなストレスや精神苦痛を覚えた者が15名、特徴的な病状(めまい、耳鳴りのような圧迫感、夜中の突然の目覚め、聴覚過敏、嗅覚喪失など)を発症したものが13名、そしてそのうちの6名(すべて女性)が工事停止後も過敏化した症状に今なお苦しんでいることが判明しました。  また、建物に生じた損壊については、事業者は自ら「補償対象地域」を決め、工事前から発生していただろう経年劣化もいっしょくたにして個別の「補修」でことを済ませようとしています。その全貌を把握するために、1件1件を巡りながら写真を撮り記録しました(合計333軒)。Google Street View の過去の写真との照合などを経て、トンネル直上エリアを中心とした調布市内で、工事後に新たに損傷が発生したと確定できた事例が30軒(うち補償対象エリア外で9軒)、工事に起因すると強く疑われる事例(地面の沈下・隆起による、大きい亀裂、門や扉やブロック外壁に隙間や傾斜)が30軒(うち補償対象エリア外が16軒)あることが判明しました。  調査会では、今後、リニア中央新幹線を含めて大深度地下工事で発生する恐れのある種々の被害を防ぐためには、発生する振動を常時モニタリングする必要を痛感し、簡易な振動計(中古iPhone を活用)を個々の住宅に設置してWi-Fi を用いてデータを自動記録するシステムを開発しました。現在、その普及にも努めている段階です。

その他/備考


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