木質バイオマス発電チェック市民会議 | ||
川端 眞由美 さん | ||
20万円 |
信州ウッドパワー(株)の木質バイオマス発電所
2022年5月の助成申込書から
長野県東御市の中心市街地を望む河岸段丘上の工業団地に木質バイオマス発電所・信州ウッドパワー?が建設され、2020年7月15日稼働を開始した。 企業が30キロ圏内とする集材圏には福島原発事故で放射性物質が沈着した軽井沢周辺が含まれるが、市は汚染木の燃焼の危険性を認識せずに企業誘致を行い、市民に計画の説明を行わなかった。
市民は自主学習を始め、放射性物質を含む木材を燃焼すれば焼却灰の放射能は200倍にも濃縮されることや、バグフィルターをすり抜けた微小粒子状物質に付着した放射能が肺の奥深くに吸い込まれて内部被ばくする可能性、大気の微小粒子は東御市を含む千曲川沿いの広域に流れること等を学んだ。
ばい煙に含まれる放射性物質を市民の手で測定するリネン吸着法検査を学んだ市民は、企業と市を監視することで、予防原則に従い警告を発することができると考え、測定を始めた。
市民が目に見える形で企業と市を監視しはじめたことで市と企業は対応を迫られた。市は工業団地の地元区の大気状態等検査を年1回実施して公表、企業が実施するとしていた搬入材と焼却灰の測定等は毎月市が企業に出向いて測定し「搬入木材及び焼却灰放射能濃度測定結果」を市のホームページで公開している。
木質バイオマス発電所を無計画的に推奨するFIT制度によって全国で木質バイオマス発電所建設が進む中、福島県は燃焼による汚染木の減容化を計画している。放射能の再汚染、拡大が懸念される今、市民の手で放射能汚染を監視する。
中間報告より
清水建設の100%子会社である信州ウッドパワーの木質バイオマス火力発電所は、間伐材由来の木質バイオマスを燃料とする出力1,990kWの発電所で、FITにより、20年間、40円/kWの売電が保証された事業です。集材圏には群馬との県境の福島原発事故で放射能汚染された地域が含まれることから、わたしたちは火力発電所のバグフィルターをすり抜けて排出される大気に含まれる微小粒子をリネン(麻)布に吸着させて放射能濃度を測定する、リネン吸着法検査を実施してきました。
ちくりん舎主催の学習・懇談会で、参加者から「東御市がバイオマス発電企業の焼却灰の放射能濃度を測定して公表しているのはなぜか」の質問がありました。一言で言えば、市民に隠して誘致した木質バイオマス発電所をいまさら市民に説明できず、毎月「搬入木材及び焼却灰放射能濃度測定結果」を公開することにするとともに、着工直前に計画を知ったことで絶対反対を表明して覚書への署名を拒否した地元・羽毛山区に、年1回、「羽毛山区における大気状態等検査」を実施することで対応したものと思われます。
「羽毛山区における大気状態等検査」は、1回260万円かかるため、東御市は、「令和5年度は実施するが、これまでの調査と比較して数値に大きな変動がない場合、毎年の検査はしない」と2022年12月に通知してきました。羽毛山のメンバーは11月、発電所入り口に建てた「絶対反対」の看板の脇に、新たなリネンを設置しました。
わたしたちは、いま、羽毛山区の大気状態等検査を自分たちで実施していくことの必要性を感じ、放射能測定器を購入することを検討しています。
昨年4月に突然社長が交代した信州ウッドパワー(株)は、10月12日から11月8日の4週間の間、燃料材の不足を理由に、一時稼働を停止しました。国のFIT認可によって2040年まで稼働・発電を予定している信州ウッドパワー(株)に対し、わたしたちは今後も、年2回のリネン吸着法検査や土壌検査、羽毛山区の大気状態等検査などを実施し、放射能汚染木の燃焼による環境汚染がされることがないよう、監視していきたいと思います。
2023年8月の完了報告より
長野県東御市が市民に隠して誘致した清水建設を親会社とする信州ウッドパワー(株)の木質バイオマス発電所は、福島原発事故で放射能プルームが沈着した群馬との県境の放射能汚染木材を含む半径30キロ圏の間伐材等を燃料としています。
市民は汚染木材を燃焼すれば焼却灰の放射能は200倍にも濃縮され、バグフィルターをすり抜けた微小粒子に付着した放射性物質が肺の奥深くに吸い込まれて内部被ばくすることを知り、市民放射能監視センターちくりん舎の指導で、稼働前の2019年11月にリネン吸着法検査を開始しました。
2020年7月に稼働を開始した信州ウッドパワーは1990kwの小規模発電ですが、市場の燃料材の奪い合い、市や市民の放射能監視の結果、2022年秋、燃料材不足で1か月間発電を停止しました。
放射能汚染木材が燃やされる危険性を認識せずに企業を誘致した東御市は、毎月「搬入木材及び焼却灰の放射能濃度測定」を行い、市のHPに公開しています。2023年6月の焼却灰から、132.8±2.8Bq/kgのセシウム137が検出されました。100Bq/kgを超えたのはこれが初めてでした。過去4回、セシウム134も検出されており、8月の2度の測定結果は123.7±2.3Bq/kg、112.1±2.0Bq/kgと、福島原発事故由来の放射能汚染木材の搬入の可能性が窺えるものでした。
先日、県内最大のソヤノウッドパワー(株)が燃料材不足で経営破綻しました。森林資源の活用を謳った木質バイオマス発電事業が危うくなる一方、国は福島原発の放射能汚染林を燃やす「減容化」を進めようとしています。
わたしたちはリネン吸着法検査を継続して市と企業を監視していきます。豊かな自然環境を子どもたちに渡すのが私たちの使命だと考えています。