いわき放射能市民測定室たらちね | ||
鈴木 薫 さん | ||
http://tarachineiwaki.org | ||
50万円 |
沖合いの調査ポイント(A〜D)
海上での採水の様子。奥に見えるのが福島第一原発
福島第一原発沖での採水作業
2021年4月助成申込書より
2021年4月13日、政府は関係閣僚等会議において、東京電力福島第一原発で発生し、ALPS等によって処理した上でタンクに貯蔵されている汚染水の海洋放出を決定した。
海洋放出を問題視・不安視する市民は多いが、まったく除去ができないトリチウムを測定できる市民測定室は、たらちねを除いて国内には存在しない。また、当測定室は、2015年9月より、福島第一原発沖や福島県沿岸で、年2〜4回の海水および魚類の放射能調査を行ってきた。
当測定室の理念からすれば、放射性物質の意図的な海洋放出そのものを許さないことが大前提である。安易な放出を許さないためにも、また、万が一放出された場合においても、市民のための市民の科学として、東京電力のシミュレーションや政府側の安全性の主張に対して、科学的データを持って立ち向かい、監視していく必要がある。
海洋放出については、原子力規制委員会の認可などを経て、2年後を目処に開始するとされている。仮に予定通り海洋放出が開始されてしまった場合、放出前のバックグラウンドを測定できるのは、この2年間に限られる。国や東電の計画通り進んでしまえば、その後の測定は、海洋放出中の経過観察のためとなり、最終的な結果を知ることができるのは、すべての放出が済んだ40年以上後のことになる。
以上を踏まえ、海洋放出を推進・容認する東京電力・政府・県などから独立した測定機関として、少なくとも2年間、各定点で海水の自由水型トリチウムのバックグラウンド調査を行う。
■ 年に4回、用船をして、第一原発沖1.5kmの定点において、表層および低層(バンドーン式採水器による)の採水を行い、電解濃縮の上で、液体シンチレーションカウンターによる自由水トリチウムの測定を行う。
■ 沖合調査に準じて、年4回、福島県沿岸の漁港および沿岸の、少なくとも南北各3定点、計6定点で採水を行い、電解濃縮の上で、液体シンチレーションカウンターによる自由水トリチウムの測定を行う。
中間報告より
2021年4月13日、政府は関係閣僚等会議において、東京電力福島第一原発で発生し、ALPS 等によって処理した上でタンクに貯蔵されている汚染水の海洋放出を決定しました。政府は、トリチウム以外の放射性核種は告示濃度限度以下まで除去するとしていますが、トリチウムは全く取り除かないまま、希釈して放出するとしています。
当測定室の理念からすれば、放射性物質の意図的な海洋放出そのものを許さないことが大前提です。安易な放出を許さないためにも、また、万が一放出された場合においても、市民のための市民の科学として、東京電力や政府側の安全性の主張や海洋拡散シミュレーションの妥当性に対して、科学的データを持って立ち向かい、監視していく必要があります。
海洋放出については、2023年春を目処に開始するとされています。仮に予定通り海洋放出が開始されてしまった場合、放出されていない状態を測定できるのは、すべての放出が
済んだ40年以上後のことになります。
以上を踏まえ、海洋放出を推進・容認する東京電力・政府・県などから独立した測定機関として、下記の方法で、少なくとも2年間、各定点で海水の自由水型トリチウムの調査を行います。
・年に4回、用船をして、福島第一原発沖1.5kmの4定点において、表層および底層の海水を採取する。
・年に2回、福島県沿岸の漁港および沿岸の8定点(相馬市、南相馬市原町、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、広野町、いわき市小名浜)で表層の海水を採取する。
・いずれも、採取した海水を電解濃縮の上、液体シンチレーションカウンターによる自由水トリチウムの測定を行う。
2021年8月と11月に、第一原発沖合での海洋調査を実施し、また、11月には沿岸8定点での採水を実施しました。
8月の調査では、トリチウムの値はすべて検出限界の0.17Bq/Lを下回りました。11月に採取した海水については、順次測定中です。なお、電解濃縮装置を導入し、検出限界を下げたことで、福島県内外で採取した河川水・湖水・雨水・水蒸気からは、主に天然由来と考えられるトリチウムが検出できるようになりました。しかし、海水からは川内原発、高浜原発の放水口付近を除いて、トリチウムは検出されていません。
今後、仮に海洋放出された場合、現在の濃度が上昇するのか、しないのか。海洋放出前の福島の海の重要なデータが得られつつあります。
2022年8月の完了報告より
2021年4月13日、政府は関係閣僚等会議において、東京電力福島第一原発で発生し、多核種除去装置(ALPS)等によって処理した上でタンクに貯蔵されている汚染水の海洋放出を、2023年の春を目処に実施することを決定しました。海洋放出を問題視・不安視する市民は多いにもかかわらず、東電のALPSなどでまったく除去ができないトリチウムを測定できる市民測定室は、たらちねを除いて国内には存在しません。福島第一原発周辺にアクセスできる地理的条件からしても、測定体制からしても、批判的立場から福島の海のトリチウム調査ができるのは、現在、当測定室以外にはありません。
以上を踏まえ、たらちねでは、年4回の沖合調査と年2回の沿岸調査を実施しています。沖合調査では、福島第一原発沖合1.5km付近の4定点で表層・底層の海水を採水するとともに、釣りにより魚類を採取しています。沿岸調査は、沿岸の漁港や砂浜などの北側4定点・南側4定点を定め、海水を採水しています。
採取した海水は、電解濃縮法による前処理を実施し、液体シンチレーションカウンターでトリチウム濃度を測定しました。2021年度は、福島の海で採取したすべての海水が検出限界(0.14〜0.17Bq/L)を下回るという貴重な結果が得られました。
なお、電解濃縮法を用いることで、福島県内外の各地の陸水、雨水、水蒸気、および川内原発・高浜原発近くの海水などからは、トリチウムを検出することができました。
また、魚の身の中にH2Oとして存在するトリチウム(組織自由水型トリチウム)については真空凍結乾燥法によって捕集し、魚の身の中の有機物として存在するトリチウム( 有機結合型トリチウム)については石英管燃焼法によって捕集し、それぞれを測定する体制を整えました。