たまあじさいの会 | ||
古澤 省吾 さん | ||
https://tamaajisai.net/ | ||
40万円 |
ホットスポットファインダーによる測定結果
田村バイオマス発電所周辺の空間放射線量と局地 地形の分析例(成果発表会の報告スライドから)
2021年4月助成申込書より
福島県田村市に建設されたバイオマス発電所は、『自然との調和、地域住民との共生を基調として、環境負荷の低減を前提とした資源循環型社会への貢献を目指す』としているが、地元住民は、放射能汚染木を燃やすことにより周辺への放射能拡散を懸念し、2016年9月には『大越町の環境を守る会』を立ち上げ、『放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会』も反対運動や提訴をしてきた。しかしそれを踏みにじって本年3月に試験操業が始まったところである。
田村市は市のHPにて、『発電施設についても、通常使用されるバグフィルタと呼ばれる集塵装置に加え、安心対策として高性能のHEPAフィルタも設置することになりました。燃料から排気、焼却灰、排水に至るまで、周辺に放射能の影響が出ることはありません。』と明言しているが、これまでの、住民との対応の経緯を見ても甚だ疑わしい。彼らを信用して、安心することは到底出来ない。
本調査の目的は、同発電所の操業に起因する放射性物質の汚染の進行がないかを、住民と協力して、執拗にフィールドワークでの観測を行う。Hot Spot Finder にて経時的にMap上に記録し、また同時に定点観測を行うことで、汚染の実態を科学的、客観的に記録し、検証して動かぬ証拠を築き上げる。
中間報告より
この研究は、2021年3月から福島県田村市大越地区に本格操業を開始した「田村バイオマス発電所」からの排気ガスによる放射能の拡散を調査・監視するものです。この地区は阿武隈山地の中にありますが、福島第一原発の爆発による汚染は、幸いなことに比較的に軽微ですみました。しかし国や県が掲げる代替・再生エネルギー推進のお題目で、田村市は12億円もの補助金を私企業に支出して発電目的で福島の木材資源を燃やしています。税金(復興予算)を使っての営利目的で、除染処理が施されていない福島の森の放射能を拡散させることになりかねません。地元の市民は「大越町の環境を守る会」を立ち上げて、裁判闘争を含む反対活動を繰り広げています。この田村バイオマス発電所から、放射能は漏れ出さない約束だとされています。もしこの施設周辺の放射線量が高まる事実が観測されたら、当局はどうするのでしょうか。我々は、その実態を以下の4つの方法で解明して行きます。
(1)リネン布17枚を大越地区に設置しました。空気中に浮遊している放射性物質(体内に取り込まれ低線量被ばくの原因となる)を捕捉します。
(2)設置期間の風の流れ(風向・風量)を連続計測できる機器を二か所に設置し観測します。
(3)ホットスポットファインダー(地図上に空間線を計測する機器)で、空間線量(放射能汚染)の分布を捉えます。
(4)同地区に設置されている公的なモニタリングポストの公表されている過去と直近のデータを比較・解析することで、空間線量の変化を調べます。
2022年8月の完了報告より
福島第一原子力発電所の事故以降、環境省は、宅地周辺の表土を削る程度の不十分な除染で住民の帰還を強制してきました。一方、宅地と農地以外の森林は放置され、これらを除染するために汚染木を伐採して、バイオマス発電の燃料として焼却するという事業を農林環境整備交付金という助成金をつけて促進してきました。
山林除染の事業は、これまでは主に福島周辺で始められてきましたが、ついに福島県内の田村郡大越地区で田村バイオマス発電事業を計画し、再汚染を危惧する住民の反対を押し切って2021年4月から本格稼働がを開始されました。住民は『大越町の環境を守る会』を立ち上げ、バイオマス発電に関わる公金支出差し止めの住民訴訟を2019年9月に提訴しました。
大越地区は福島第一原発の西側に位置し、県内では比較的汚染が少ない地域で、事故後も住宅地の除染は行わないまま、住民は移住せずに生活してきました。大越地域は、海底で堆積した古い地層が隆起した阿武隈山地の中にあるため、花崗岩質の土壌が自然放射能や放射性セシウムを引きつけることについて、放射能測定での考慮が必要になってきました。
東京の日の出町のエコセメント化施設でも原発事故以降、多摩地域から高濃度に濃縮された放射能汚染焼却灰が持ち込まれ処分されました。たまあじさいの会は、施設からのばいじんによる大気放射能汚染と大気経由で地上への降下放射能汚染を「NPO法人放射能市民監視センターちくりん舎」のゲルマニウム半導体検出器による正確な計測により、裁判においても実証してきました。
たまあじさいの会は、これまでの調査からの知見などを大越の住民と共有することで効率的な問題解明に寄与できると考え、今回の調査を企画しました。具体的には、(1)バグフィルタの粉塵捕捉率の科学的検討、(2)リネン吸着法による大気中浮遊セシウム粉塵の検知、(3)施設周辺空間線量率・土壌表面密度の知見、(4)山間部施設からの局地気象による大気汚染の特性、(5)小学生登校時と山風による汚染濃縮の時間帯の一致と健康被害、等です。
事業者側は、バグフィルタの後段にHEPAフィルタ―を設置したので汚染はほとんどないと主張しています。しかし、HEPAフィルタ―の排ガス処理能力など技術的に不整合な点があることから、大越バイオマス施設からの周辺への放射能汚染を明らかにし、バイオマス施設が、大越地区にあらたな放射能汚染をもたらしかねないものであることを検証・証明することを目指しています。