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沖縄県名護市大浦湾の海底生物調査



グループ名 大浦湾海底生物調査会
代表者氏名 馬渕 一誠 さん
URL
助成金額 100万円

大浦湾の海図と本調査の候補地点 ★印は最も深い軟弱地盤地点B-27;1、2、3は本調査の候補地点 (「釣りナビ君」https://tsurinavi-kun.com/map/より引用、加筆した)

2022年4月の調査の様子(成果発表会の報告スライドから)

研究の概要

2021年4月助成申込書より
日本政府/沖縄防衛局は沖縄県名護市辺野古に米軍新基地の建設を行っており、2019年12月から辺野古岬の南側の浅海域予定地に土砂を投入している。今後は辺野古岬の北側すなわち大浦湾西側沿岸近くの海底を埋め立てる計画である(全埋め立て面積約160haの3/4)。 大浦湾の生物調査はこれまで沖縄防衛局、日本自然保護協会、ダイビングチームすなっくスナフキン等によって1997, 2007-2015年に行われている。その結果、大浦湾は262種の絶滅危惧種を含む5300種の生物が生息する豊かな海域であることがわかった。この事実は世界でも認められ、2019年にS. Earle博士主催のNGO“Mission Blue”は日本で唯一のHope Spotとして認定した。しかしこれらの生物は、埋め立て海域においては死滅し、それ以外の部分においても工事による汚染によって大きな影響を受ける。基地の完成後も排水などによる湾内汚染は恒久的に続くだろう。 上記の調査はいずれも湾の水深30m付近までのものであるが、大浦湾の埋め立て予定海域にはそれ以上の深度の部分があってそこにどんな生物が棲息しているかは未知である。特に2016年に深さ90mに達する軟弱地盤が確認された。このため沖縄防衛局は埋め立て計画の変更を余儀なくされた(現在沖縄県に対し変更申請中)。しかしこの変更に伴った環境アセスメントは行われていない。従って湾の深部の生物群は未知のまま埋め立てられることになるという乱暴な計画なのである。そこで私たちは埋め立て予定海域の30m以下の海底の生物層を調査研究する計画を立てた。この調査研究により海底生物群の保全を訴えたい。

中間報告

中間報告より
 本研究の目的は水中ドローンを用いて大浦湾海底の生物調査、特に動物の調査を行うことです。現在、辺野古の米軍基地建設が進んでおり、沖縄防衛局の計画によれば、大浦湾の西側海域は埋め立てられます。この海域には、潜水調査が困難な深部が存在しますが、その領域を含めてこれまでの海底生物調査は不十分であり、どのような生物が棲息しているか未知のため、新たに水中ドローンBlueROV2(BlueRobotics,Inc.,CA,USA、100mの水深まで潜水可)を用いて調査を行いたいと考えました。  これまでBlueROV2の組み立て、運転操作の習得に時間を費やしましたが、この過程は予想以上に時間がかかりました。その理由は、新型コロナウイルス感染の第5波と、業者とチームメンバー間で習得日程を合わせることに苦労したこと、さらに、運転操作そのものが予想を超えて困難だったからです。現在はBlueROV2を業者から借用し、沖縄( 琉球大学) に送付してあります。調査に使用する船の借用も決まり、船長さんと連絡をとっています。BlueROV2 をコントロールし、かつ映像を取得するためのパソコンを整備後、BlueROV2のマニュアルをインストールし、正常に動作するように調整しています。このように海底調査の準備はできており、2021年12月に調査日程(5泊6日)を決めましたが、天候不良と強風・高波の予想のためやむなく中止し、現在に至っています。

結果・成果

2022年8月の完了報告より
 日本政府/沖縄防衛局は名護市辺野古で米軍新基地建設を行っており、2019年12月から辺野古崎南側の浅海の建設予定地域に土砂を投入しました。今後は辺野古崎北側(大浦湾西側沿岸近く)の海域を埋め立てる計画です。この海域は湾奥・西岸から複数の川が流れ込み、浅場と深場が存在していて湾内の生物多様性を支えています。  大浦湾の生物調査はこれまで沖縄防衛局、日本自然保護協会、潜水チームすなっくスナフキン等によって行われました。その結果、この湾は262種の絶滅危惧種を含む5,300種の生物が生息する豊かな海域であることがわかっています。2019年にアメリカのS.Earle博士主催のNGO“Mission Blue”はこの海域を日本で唯一のHope Spotと認定しました。しかしこれらの生物は、埋め立て海域においては死滅し、それ以外の部分でも海水汚染により大きな影響を受ける運命にあります。  上記の生物調査はどれも主に水深30m以浅のもので、それ以上の深部に棲息している生物については未知であるため、私達は深場の海底の生物層の調査を開始しました。この調査を通して海底生物群の保全を訴えていきます。  調査には水中ドローンを用い、埋め立て予定海域近くの深さ40m?60mの海底撮影を行いました。2回の調査で計220分以上にわたる観察を行った結果、この海域は30m以浅と異なり、イシサンゴや海藻はまず見られず、代りに軟サンゴ類、ホヤ、コケムシが多数確認されました。これらのほとんどはこれまで大浦湾からは報告されていない貴重なものと考えています。  この海域は埋め立て予定海域に隣接した海底谷の一部であり、埋め立て土砂が容易に流れ込み、汚染海水が滞留すると考えられる海域です。そのため棲息している生物には大きな負の影響があると予想されます。本調査のような調査を行うことなく埋め立てを強行すれば大浦湾の生物多様性を大きく破壊してしまう恐れがあります。  調査の反省点は、得られた映像の画質が不十分だったことです。興味深い生物に遭遇しながら、画質が悪く生物種を同定できない場合がほとんどでした。今後の課題として、生物種の確かな同定のために高解像度の映像を得ること、実際に生物を捕獲して生理学的研究、遺伝子解析を行うべきであることが挙げられます。

その他/備考


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