研究成果発表会配布資料[pdf] |
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伊藤 延由 さん | ||
40万円 |
飯舘村内での山菜コゴミの採取の様子。採取地点の空間線量は、地上1cmで2.28μSv/hを示している
飯舘村で採取された猪鼻茸(香茸)。村の非破壊式検査器による測定の結果では、セシウム134・137合算で28,369.7Bq/kgの検出となった。現在、ゲルマニウム半導体検出器でも測定をしている
2016年12月の助成申込書から
福島県相馬郡飯舘村は原発事故により居住制限地域に指定されているが、2017年3月で制限が解除されることになった。身の回りのもの全てが汚染され、空間線量も年間1mSvという基準を超えているため従前の生活はできないが県や村などの公的機関からの適切な生活指導はなされていない。汚染された飯舘村に住むというのはどのようなことなのか、身の回りの放射能汚染を測定することにより、その意味を考える材料を提供して行きたい。
事故後、申請者は福島市松川町の仮設住宅に避難したが、最近はもっぱら飯舘村内に居住し、研究者やジャーナリストなどのサポートを続ける一方、空間線量、個人被曝線量、それに土壌、植物など思いつくままに様々な材料の放射性セシウム量の測定を続けてきた。そうした中で、
(1)土壌中セシウム量が国が示す降下放射線量と合致せず、局所的に大きく振れること
(2)植物のセシウム量も土壌中濃度とは比例せず、移行率には大きなばらつきがあるが、蜂蜜は比較的よく比例していること
(3)植物の中でも枝葉の先端部など盛んに成長している部分に概してセシウムが蓄積しやすいこと
(4)植物の種類によっては茹でたり塩漬けにしたりするとセシウムが減少する場合があること
など多くの発見があった。
本研究においてはこれまで行ってきた様々な身の回りの測定をより体系的な形で継続すると共に、植物の放射能蓄積メカニズム解明や収穫後の処理によるセシウム除去にむけた実験的な取り組みを行なおうとするものである。こうした成果は適宜村民に公表し注意喚起していくとともに、村民のほぼ半数が参加しているADRの場でも活用する予定である。
2017年10月の中間報告から
福島県相馬郡飯舘村は東京電力福島第一原発事故により居住制限地域に指定されていましたが、2017年 3月で制限が解除されました。身の回りのもの全てが汚染され、空間線量も年間 1mSvという基準を超えているため、従前の生活はできませんが、県や村などの公的機関からの適切な生活指導はなされていません。汚染された飯舘村に住むというのはどのようなことなのか、身の回りの放射能汚染を測定することにより、その意味を考える材料を提供しています。
本研究は、これまで行ってきた様々な身の回りの測定を、より体系的なかたちで継続し、植物の放射能蓄積メカニズム解明や、収穫後の処理によるセシウム除去にむけた実験的な取り組みを行なおうとするものです。こうした成果は適宜村民に公表し、注意喚起していくとともに、村民のほぼ半数が参加している集団ADR(裁判外紛争解決手続き)の場でも活用する予定です。
これまでの調査研究も、(1)土壌の汚染度合いの非均一性、(2)土壌の汚染度合いと比例しない山菜等への移行、(3)部位による汚染度合い(セシウム濃度)の違い等を感じながらすすめて来ましたが、今回もこれらの確認を中心にすすめております。
しかし、自然界のセシウムの挙動は素人には解し難い要素があるようで難渋しています。山菜、茸のセシウム濃度と土壌のセシウム濃度が比例しないことは、これまでも確認されています。土壌のセシウム濃度以外の要素を探していますが、現時点では、(1)土壌の水分量、(2)土壌のカリウム分量が関与している事は想定出来ますが、確定するまでには至っていません。
また、今年度は特に土壌のサンプリング、分析をすすめています。汚染物質の一つであるセシウム134は、事故後 6年が経過し、1/8に低下しており、やがて手持ちのNaI測定器では検出不能になる可能性があります。コアサンプリング23本(5cm×6)を含め検体数で157検体を分析中です。
その他、以下のような点について、検証を行っています。
(1)塩蔵処理による脱セシウムの可能性
植物の種類によっては茹でたり塩漬けにしたりするとセシウムが減少する場合があることがわかってきました。茹でるなどの処理では、精々50%程度の低減効果しかありませんが、フキの塩蔵については200Bq/kg が10Bq/kg に低下するという結果がでました。現在は、ワラビで試験を行っています。
(2)村が設置した非破壊式検査器の精度確認
誤差が大きいもの小さいものがありそれらの条件は何かを、検体数を増やし模索しています。
完了報告・研究成果発表会資料より
福島県相馬郡飯舘村は、東京電力福島第一原発事故により居住制限地域に指定されていましたが、2017年3月で制限が解除されました。身の回りのもの全てが汚染され、空間線量も年間1mSvという基準を超えているため、従前の生活はできませんが、県や村などの公的機関からの適切な生活指導はなされていません。
本研究は、これまで行ってきた様々な身の回りの測定を、より体系的なかたちで継続し、植物の放射能蓄積メカニズムの解明や、収穫後の処理によるセシウム除去にむけた実験的な取り組みを行おうとするものです。
調査研究は、(ア)土壌の汚染度合い(セシウム濃度)の非均一性、(イ)土壌の汚染度合いと比例しない山菜等への移行、(ウ)部位による汚染度合いの違い、等を感じながら進めてきました。自然の循環サイクルに組み込まれたセシウムの挙動は理解しがたく、当初目論んだ目標を達成できませんでした。
土壌汚染度合いの非均一性については、2011年からの栽培実験で使用している畑で、既に8年間、トラクターによる耕うん(4回×8年)に加え、小型耕運機による耕うん(3回×8年)を経ても均一化出来ず、40m2の範囲で2,800〜4,050Bq/kgの状態が続いています。
事故直後に降下した放射性物質のバラツキが原因と思われますが、未除染の山林原野はこのバラツキのまま経過しているため山菜や茸の値は採取ポイント毎に大きく異なり“測ったもの以外はわからない”状態です。
この調査の過程で、副次的効果として、除染の効果を疑わざるを得ない残念な結果が得られました。春先のふきのとう採取と同時に採取場所の土壌及び空間線量率を測定しましたが、測定8カ所中(何れも除染実施地)、唯一1カ所で除染の効果が認められましたが、他の7カ所では9,800〜28,000Bq/kgを示し、空間線量率も1.20〜1.58μSv/h(高さ1m)を示しました。この場所は村道脇や駐車場等で人が往来する場所です。飯舘村に投入された除染費用は3100億円とも言われていますが、効果と呼べるレベルには遠く及ばない結果でした。
飯舘村の空間線量率・ふきのとう・土壌の測定結果。すべて除染済みの土地