Mongolian Sustainable Development Bridge NGO | ||
Ulziibileg Dugarsuren さん | ||
http://www.sustainablemongolia.mn/ | ||
5,000US$ =約50万円 |
汚染が深刻なトール川流域にある鉱山現場
2016年9月の申請書より
現在、モンゴルでは政府の電力生産増強と財政赤字解消方針により、鉱山の採掘活動が以前よりも活発になっています。加えて、石炭火力発電所計画は国内で最も水が少ない地域で行われているため、表層水を鉱山まで運ぶための大規模なパイプラインの建設計画や地下水の使用による井戸水の減少などが、生態系全体に大きな影響を与え、特に水資源に深刻な状況をもたらしています。
しかしながら、一般市民はこれらの事業がもたらす環境・社会影響についてほとんど知りません。私達はこうした現状に対して、地域社会が問題意識を持ち、積極的に課題解決に向けて参画していけるよう促していく一方、企業に対しても適切な水資源管理等、持続可能な対策を取り、社会環境影響に対して責任を持つよう、働きかけていきます。
調査方法としては、鉱山開発で影響を受ける現場を訪れ、地元コミュニティおよび遊牧民を巻き込みつつ、新政府、アジア開発銀行・欧州復興開発銀行、モンゴルの電力・鉱山各社、モンゴル環境市民カウンシル、環境NGOやシンクタンクなどとの半構造的インタビューを通じて情報収集を行い、フィールドでの記録撮影とともに結果は報告書にまとめ、一般市民への啓発活動に役立てていく予定です。
研究チームの最終的な目標としては、市民科学者のグループを創り、集約した声をデータ化し、信頼性ある独立した情報機関を構築していきたいと考えています。
2018年2月の最終報告書より
モンゴルでは石炭を主要なエネルギー源として位置づけているため、鉱山の採掘活動に加え、新たな石炭火力発電所計画も進めていますが、採掘活動は国内でも水が希少な地域で行われ、また石炭使用による大気汚染が年々、酷くなるなど、深刻な環境・健康問題が持ち上がっています。
私達は、政府、企業に対して、これらの問題に責任を持って取り組むように働きかけると同時に、一般市民への普及啓発活動を行ってきました。
前半は文献調査に加え、ウムヌゴビ県、ダルハン県、バンガル県にある4ヶ所の鉱山と2ヶ所の水力発電所候補地を訪れ、地元行政や関係省庁、鉱山関係者、地元コミュニティ等の多様なステークホルダーとのインタビューを行う他、120人以上の市民、7つの地元NGOにインタビューを実施し、情報収集を行いました。
後半は、ウランバートル市全域への石炭供給を担う巨大炭鉱があるバガヌール市で、若者を対象にした”市民科学グループ”会合を開催し、石炭や石油に代わる代替エネルギーに関するセミナーを開催しました。石炭は、火力発電や市内のゲル地区で使用される石炭ストーブとして消費されていますが、これらは深刻な大気汚染源となっているため、こうした問題の認識を共有する目的もありました。
続いて、ウムヌゴビ県グルバン・テス行政区でも地域住民(主に若者)を対象にして同様の会合を開きました。同地域は10ヶ所以上の巨大石炭鉱山を抱えるものの、独特な生態系が広がるゴビ砂漠の中央部にあり、全てを開発させるだけの水はないため、水の重要性や代替生計手段について説明しました。地域人口の約半分が炭鉱関連産業に就いていることから、声を上げることは容易なことではありませんでしたが、出席した若者からは、環境を守ることの重要性や代替生計手段について知ることができたと、大きな反響がありました。
※本報告の背景、詳細につきましては、現地取材レポートとして、”アジアの市民科学者を訪ねてシリーズも併せてご覧下さい。↓ http://www.takagifund.org/activity/asia/index.html