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ボトムアップ型エネルギー供給システムの構築可能性に関する研究



グループ名 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 手塚智子 さん
URL
助成金額 40万円

“100%再生可能エネルギー地域”プロジェクトへの参加自治体地図

研究の概要

2011年12月の助成申込書から
 日本における発送配電分離の議論を活発化、具体化し、現状より民主的で地方分権的なボトムアップ型のエネルギー供給が可能なシステムの構築につなげることを目的に、国内及びドイツ調査を通じて、特に再生可能エネルギーを主軸とした非営利事業体(協同組合、自治体、地域公社など)による電力事業の現状と課題、可能性を明らかにします。  具体的には以下について調査・考察します。 (1)日本における10電力体制以前、及び現在の自治体、協同組合による電力事業の調査 (2)ドイツにおける、協同組合及び地域公社による電力事業の実態と課題を調査 (3)ボトムアップ型エネルギー供給が可能なシステムの構築に向けて、現在の日本における制度面等の課題と、その転換に有効と思われる解決策を整理し、日本の実情に即したエネルギーシフト(ボトムアップ化・グリーン化)に向けた方策を研究 <1年目>主に(1)、(2) 【方法】  ・資料、文献およびインターネット上から情報収集、翻訳、整理 ・聞き取り調査(国内、ドイツ) ・エネルギーシフトに取組む市民団体、生活協同組合、自治体担当者との意見交換 <2年目以降> 1.情報収集、調査研究を継続:主に(3) 2.普及活動 3.モデル化

中間報告

2012年10月の中間報告から
 日本における電力システム改革の議論が具体化する中で、民主的で地方分権的なボトムアップ型のエネルギー供給システムの構築の推進に資することを目的として、国内及びドイツで調査を行っています。  2011年6月、ドイツでは、東京電力・福島第一原発事故を受けた世論の高まりを背景に、保守政権が脱原発に方針転換しました。一方、自治体や市民が地域からエネルギー供給に関与する「ボトムアップ型」の動きがさらに加速しています。  この背景には、脱原発を望む市民意識と、1998年に始まった電力自由化の紆余曲折があります。電力会社間の競争や合併が進む中で、大手電力会社は市場での影響力を増し、元来地域でイニシアチブを握っていたエネルギー供給システム(配電)を配下に置く動きを強めていました。最近では、地域配電公社が電力事業や配電網を買い戻す動きや、買い戻しを求める住民運動が、主に都市部で増えています。  「“100%再生可能エネルギー地域”プロジェクト」は、地域のエネルギー自立をめざすドイツ国内の自治体ネットワークで、現在132自治体が参加しています。9月下旬に全国会議が開催され、先進事例や課題について情報収集を行いました。また、市民が電力事業体を作る動きも活発化しており、2001 年にわずか66 組合だったエネルギー協同組合は、2011年には586組合に増加。その設立目的を聞くと、再生可能エネルギーの推進や市民参加のみならず、富の分散や地域社会の価値創出など本質的な社会変革に及んでいます。  日本を見ると、2014年以降の電力完全自由化に向けた議論が始まる一方、「福島おひさま連合」に見られるような、再生可能エネルギーによる発電事業を地域に根ざして展開する動きも広がりつつあります。  ドイツの電力自由化は今も発展途上にあり、全体像の把握は容易ではありませんが、その経緯からは多様な教訓が得られ、引き続きドイツと日本における、ボトムアップ型エネルギー供給システムの可能性を探ります。随時成果の公表を行い、関心を寄せる市民団体や自治体の動き等と連携したいと考えています。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 本研修では、現状の大規模集中型の発送配電システムに代わる、ボトムアップ型エネルギー供給システムの構築を推進するため、国内およびドイツで調査を行いました。  国内では、各地で生活協同組合や市民団体の関係者と共同研究会や意見交換などを行ったほか、ドイツのエネルギー協同組合の現状と事例の発表などを行いました。また、中国小水力発電協会、志和堀電化農協を訪問し、戦後、地域の住民・農業協同組合が主体となって導入し維持されてきた小水力発電所の現状と課題についてヒヤリングしました。  ドイツでは、2012年9月には「“100% 再生可能エネルギー地域”」全国会議へ参加し、11月にはバイオエネルギー村のひとつシュレーベン村に訪問し調査しました。12月から2013年2月にかけては、ベルリン市およびハンブルク市における電力システムの現状と課題を調査し、とりわけ、電力システムの主権をめぐる動き、配電網を地域・市民の手に取り戻そうとする動きについて、市民、公社、脱原発運動家の方々などにヒヤリングを行いました。また、市民が立ち上げた自然エネルギーの電力会社であるシェーナウ電力を訪問し、ボトムアップ型エネルギーシステムの推進をめぐる最新状況のヒヤリングも行いました。  今回の調査を通して、ドイツでは自治体や市民が地域からエネルギー供給に関与する「ボトムアップ型」の動きがさらに加速していることがわかりました。その動きは全土にわたり、同時多発的であり、“エネルギー革命”の様相を呈しています。  市民や地域が自ら創エネし、エネルギー事業に参画する理由は何でしょうか。それは、脱原発や気候変動対策だけではありません。エネルギー価格や供給安定性を改善し、地域に収入や雇用、多様な価値を生むことも魅力となっています。その根幹には、エネルギー供給に対する決定権を持とうとする市民と地域の姿がみえてきます。巨大産業中心の集中型システムに依存せず、経済状況や政権の交代にもゆるがない「エネルギー自治」に向けた、静かな“エネルギー革命”が進行しています。  日本でも、再生可能エネルギー法の施行を契機に、市民や地域が主導する多彩な発電事業が次々と生まれています。電力システム改革の動向もにらみながら、今後も調査を進め、日本におけるボトムアップ型エネルギー供給システムの構築に向けて、議論の活発化とその実現に貢献したいと思っています。

その他/備考


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