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沖縄県沖縄市泡瀬干潟のサンゴ群落調査(移植サンゴを含む)



グループ名 泡瀬干潟を守る連絡会 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 前川 盛治 さん
URL http://saveawasehigata.ti-da.net/
助成金額 50万円

移植サンゴのスギノキミドリイシ。東防波堤西、深場にて。鉄枠は移植した場所。だが、僅かしか生き残っていない。(2016年5月23日)

ヒメマツミドリイシ。西防波堤西端北西部にて。殆どが死滅し、被度は僅か5.6%であった。(2016年6月30日)

2016年6月30日の調査で被度5.6%となってしまっていた100mライン上のサンゴは、2017年3月29日の調査で被度0%になっていた

東防波堤西沖の移植サンゴの調査。スギノキミドリイシ(上)もヤッコアミメサンゴ(下)も、D:不良、C:やや不良の場所が多く見られる(2017年3月29日)

高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(前川盛治さん)

研究の概要

2015年12月の助成申込書から
 サンゴ礁域において埋立工事を実施する際にはサンゴ群集への影響をはかり保全を行うことが当然ですが、泡瀬干潟の埋め立て事業においては、事業者は埋立地に棲息するサンゴ群集及び周辺海域に広がるサンゴ群集の存在をアセスの段階では認めませんでした。私達市民の手によりサンゴ群集の存在が発見され、事業者はサンゴの存在を認めたものの、アセス書の記述の間違いを認識していながら、「保全の対象ではないとの申請で埋め立てが承認されている」との見解を示し、工事が進められています。  事業者(国・沖縄県)もサンゴ群集の調査を2007年度以降調査し、年々サンゴの被度が減少していることを示しているものの、工事の影響を認めていません。  私達は、埋め立ての影響を測るため、埋立地近くに生息しているサンゴ群集の定点調査を1か所設置し行っていますが、被度が年々減少しています。現在は1地点のみの調査であるため、新たな地点を設置し、現地点と比較検討し、埋立の影響をより正確に測りたい。同時に、海域の濁り・汚濁を調査し、サンゴの被度減少の原因も把握します。  また、埋め立て地のサンゴ群集の一部は、事業者ではない沖縄市と民間NPO法人がボランティアとして埋立地の外に移植されたものの、放置されています。そのためそのサンゴの状況を把握する調査を行いたい。  埋め立てに伴い、周辺環境がどのように変化していくか科学的データとして記録し、保全措置の有効性を測るためモニタリングを実施したい。調査結果は公表し、行政交渉等に用いるとともに、埋立工事が周辺海域に与える影響や保全の在り方を考察します。

中間報告

2016年10月の中間報告から
 埋立事業が行われている泡瀬干潟の西防波堤の西端、北西部には、約3万m2のヒメマツミドリイシ群落があります。このサンゴ群落は、2000年当時の埋立計画のアセス書では、被度10%以下で、保全の必要なしとして記載されていました。しかし、2005年、泡瀬干潟を守る連絡会の調査で、被度50%以上の群落が約2500m2あることが分かり、その指摘を受けた事業者(国・沖縄県)の調査で、被度60%以上の約3万m2のヒメマツミドリイシ群落が明らかになりました。  このサンゴ群落は、発見当初から、被度が年々減少しています。当会等の調査では、2005年度50%、2015年度17%でした。約1.5km 離れた泡瀬干潟・浅海域埋立地(当初は187ha の計画、現在は変更されて約95ha)の影響で周辺海域が濁るなどの原因もあって減少していると私たちは推測しています。  私たちは、泡瀬干潟・浅海域の環境を守り、悪化を防ぐために、サンゴ等の調査を行い、その保全のための方策を提言する必要があります。  そのような趣旨から、今年度は、(1)2005年から実施しているヒメマツミドリイシの調査の継続、(2)新たな調査区域でのヒメマツミドリイシの調査、(3)埋立地の中に生息していたサンゴが移植されたが、そのサンゴがその後どうなっているのか、の調査を行っています。  これまで、特に、ヒメマツミドリイシの被度については、昨年の17%から今年の5.6%まで極端に悪化していることがわかりました。このサンゴの調査は事業者も行っていますが、昨年は10%、今年は5%となっており、いずれの調査でも、ヒメマツミドリイシの危機的状況を示しています。事業者はその原因を(1)冬季の干出による影響、(2)シロレイシダマシによる食害をあげていますが、これには疑義があります。  冬季の干出はこれまでも幾度となく経験しながらヒメマツミドリイシ群落が被度50%以上保持してきていたことからすると、理由になりません。事業者のデータを見ると、過去の夏季と冬季の被度の差はなく、逆に冬季に被度が高いときもあります。シロレイシダマシの食害については、私たちの調査では、確認できませんでしたし、仮に事業者が言うように「食害」(1m2に100個生息)であれば、それを放置してきた責任が問われます。過去に他地域でオニヒトデによる食害があった際には、県は様々な対策をしてきました。泡瀬干潟では、見過ごしてきたということであり、その責任は重大です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より

1.泡瀬干潟のヒメマツミドリイシの被度調査を2005年以降続けています。2016年度は、6月30日に調査したところ、被度が5.6%と極端に悪化、その後2017年3月には被度がゼロになりました。この種の絶滅が心配され、このことを記者会見で明らかにし、原因と思われる埋め立て工事の中止を事業者(国沖縄総合事務局、沖縄県)に要請しました。沖縄タイムス論壇にも投稿・掲載され、広く市民・県民に知らせました。
2.2000年の埋め立て工事のアセス書で、保全の必要なしとされた泡瀬干潟の海域において、泡瀬干潟を守る連絡会の調査では、ヒメマツミドリイシの群落が確認され、それを事業者も認めました。埋め立て予定海域に保全されるべきサンゴは生息していないとアセス書に記載されていましたが、それも連絡会の調査で、リュウキュウキッカサンゴやスギノキミドリイシが確認され、事業者も認めました。そのヒメマツミドリイシについては、上記「1.」記載のように被度の調査を継続してきました。また、埋め立て地のサンゴは泡瀬干潟の他の海域に移植されたため、経過を見るために、調査の必要を認識し調査をしています。
3.移植サンゴは大きく3つの場所に移植されました。「西防波堤東端の灯台近く」、「東防波堤のテトラポット」、「東防波堤の西側の沖合」の3カ所です。移植を実施した沖縄市、NPO 法人コーラル沖縄は、「概ね良好に生育」と報告していますが、私たちの調査では、評価(A:良、B:やや良、C:やや不良、D:不良)でC、Dの移植サンゴもあり、沖縄市等の報告は実態を反映しておらず、問題であると認識しています。

その他/備考


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