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原子力規制行政の市民による検証



グループ名 原子力規制を監視する市民の会 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 阪上 武 さん
URL http://kiseikanshi.main.jp/
助成金額 40万円

「原子力防災・避難計画 ヨウ素剤の事前配付を求める院内集会&政府交渉」の様子(2017年3月31日)

高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(阪上武さん)

研究の概要

2014年12月の助成申込書から
 原子力規制を監視する市民の会は、原子力規制行政の監視活動を続けており、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査に係る調査研究活動を行ってきた。これまで、川内原発の再稼働に際して、火山リスクをめぐる諸問題、原子力防災と避難計画をめぐる諸問題、基準地震動の策定や耐震安全評価をめぐる諸問題、運転開始30年経過時に要求される高経年化対策に係る審査の手続き上および安全上の問題、福島原発事故で問題となっている海洋への汚染水放出の防止対策に係る問題などを指摘し、対応を求めてきた。  今後の原発の再稼働に向けた安易な審査を許さないためにも、既に再稼働している原発の監視を続けるためにも、審査の過程で明らかになった問題を整理し、また、新たな問題点を抽出して指摘する作業が求められている。技術論争や裁判の資料としても活用できるよう、公開されている審査資料や映像記録、議事録に基づき論証的に、なおかつ、様々な場面で活用できるよう、市民にもわかりやすく整理することが、市民科学の課題となっている。  検証のテーマとしては、既に終了している、または先行して進んでいる審査で問題となった事柄の整理に加えて、特に注目すべき審査として、沸騰水型原発で優先審査となった柏崎刈羽原発6・7号機の審査及びまもなく運転開始40年が経過するため、寿命延長のための審査が必要となる美浜原発3号機、高浜原発1・2号機の審査が挙げられる。

中間報告

2016年10月の中間報告から
 原子力規制を監視する市民の会は、原子力規制行政の監視活動を続けており、原子力規制委員会による新規制基準適合性審査に係る調査研究活動などを行ってきました。今年度前半は、以下のような問題に取り組んできました。 <40年超え老朽炉の寿命延長問題>  福島原発事故を受けて原発の運転期間は40年と定められました。運転期間延長は例外的な措置となり、期限までに認可を得なければならなくなりました。しかし、規制委は必要な安全確認よりも期限前の認可を優先しています。  今年期限を迎える高浜1・2号、美浜3号はいずれも耐震安全性に問題を抱えています。従来の規格やガイドに従った評価では基準地震動を入力したときの発生値が許容値を超えてしまい、耐震安全評価をパスできない機器があるのです。高浜1・2号では蒸気発生器がこれにあたります。  本来ならこの時点で、認可はできないとすべきでしたが、規制庁は便宜を図り、実機での試験を条件に減衰定数の変更を容認し、さらに実機での試験の先送りを容認する方針を示しました。工事計画認可は、運転期間延長認可の前提となるものです。これは40年ルールの逸脱であり、ガイドや原子炉等規制法にも反するものです。  こうした問題が、審査の検証、規制庁との交渉などを通じて明らかになったことから、声明や署名などで市民の皆さんに訴え、規制委・規制庁に運転期間延長の認可をしないよう要請しました。名古屋地裁に提訴された行政訴訟にも協力し意見陳述も行いました。 <原発の地震動評価の過小評価と耐震安全性>  元原子力規制委の島崎邦彦氏が熊本地震のデータに照らして、原発の地震動評価で使われている入倉・三宅式には過小評価があると指摘し、波紋を広げています。私たちは、これが直接問題となった大飯原発に限らず、多くの原発の耐震安全性評価に影響を与えるものであることを明らかにし、全ての原発の地震動評価を見直すよう求めました。  また、熊本地震ではくり返し強い揺れが発生しましたが、原発の金属疲労の評価では、余震の影響が考慮されていません。これを政府交渉の場で明らかにし、余震の影響を考慮した場合、疲労評価は許容値を超えることから、川内原発などを止めるよう要請してきました。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より

 原発の再稼働を巡り、焦点となる諸問題について原子力規制委員会の審査を監視し、交渉などを通じて調査、検証を行い、それを公にしながら解決を目指す作業を行ってきました。
・ 原発の基準地震動の策定に用いられる経験式の過小評価についての島崎邦彦元原子力規制委員長代理の提言を受け、提言の内容、規制庁による試算、規制委による批判と島崎氏の再反論などを検証しました。
・ 熊本地震の教訓から、繰り返しの揺れに対する原発の耐震安全性について調査し、政府交渉などを通じて、現状の耐震審査では、繰り返しの揺れの影響が考慮されていないことを明らかにし、さらに、現状の審査資料から、繰り返しの揺れの影響を考慮した場合には、不合格となることを明らかにしました。
・ 火山灰の影響評価において、新知見等から、現状の評価に過小評価があることが明らかになりました。非常用ディーゼル発電機が機能喪失に陥る可能性があり、設備対応が求められることから、原発を一旦運転停止させた上での検討を求めました。
・ 美浜原発3号炉、玄海原発3・4号炉、川内原発1・2号炉(免震構造なしの緊急時対策所の設置変更許可)の原子炉設置変更許可申請の審査書案に対するパブコメの提出をよびかけ、「パブコメのたね」を作成し、ワークショップを開催しました。
・ 40年超え老朽炉の美浜3号炉、高浜1・2号炉の運転期間延長認可について、中性子照射による応力腐食割れや疲労の進展、劣化を考慮した耐震安全性などについて問題点を指摘しながら、署名活動に協力し、また、名古屋地裁での行政訴訟に協力しました。
・ 島根原発で発覚した、中央制御室の空調ダクトに腐食による多数の穴が開いていた問題で、同様の問題を運転中の原子炉でも抱えている可能性があることから、直ちに停止して点検するよう緊急の要請を行いました。規制庁はその後、点検指示を出しました。
・ 原発の重大事故に備えた安定ヨウ素剤の事前配布について、PAZ(5km圏)だけではなく、UPZ(30km圏)についても事前配布を行うよう、また、避難弱者の施設について、すぐに配布して服用できる体制をとるよう求め、国および地方自治体に対して要請を行いました。政府交渉を通じて、3歳未満の乳幼児を対象としたゼリー状安定ヨウ素剤の自治体独自での購入を可能とし、ひたちなか市での国費による配布を一部認めさせるなどの成果を得ました。

その他/備考


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