FoE Japan |
研究成果発表会配布資料[pdf] |
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満田 夏花 さん | ||
http://www.foejapan.org/ | ||
50万円 |
3・11甲状腺がん子ども基金 設立記念シンポジウム。当日は350人が参加した。
療養費の給付状況。『療養費給付事業「手のひらサポート」第1期のまとめ』(3・11甲状腺がん子ども基金、2017年4月11日)より作成
福島県県民健康調査甲状腺がんの子どもたちの数。2017年6月5日までの福島県県民健康調査委員会による発表をもとに作成
高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(満田夏花さん)
2015年12月の助成申込書から
現在、福島県県民健康調査で、甲状腺がんが確定した子どもの数は115人となった。一方で、国や県による「被ばくの影響は大したことがない」という宣伝により、受診率は低下している。甲状腺がんと診断された子どもたちの中には、低分化がん・肺転移など深刻な症状もあり、リンパ節転移も多数を占めている。甲状腺がん以外の健康影響については、その実態が把握されていない。
本事業においては、医療関係者・弁護士、いままで被害者や原発作業者支援などを行ってきた市民団体により「甲状腺110番(仮称)」を設置し、福島県および近隣県における患者たち、原発作業者および健康不安をかかえる人たちが、健康相談・法律相談を行い、その被害救済を行うための基盤づくりを行う。
また、被ばく影響の把握のために行政・大学・研究機関・市民で取り組まれている調査研究のレビューを行い、市民・弁護士・医療関係者が参照可能な情報源台帳の作成を行う。
さらに、民間や自治体による自主的な甲状腺がん検診の実施機関や関心を有する人たちによる情報共有を行い、同一のフォーマットを用いた健康影響の共通プラットフォーム化および共同調査の可能性を検討する。
2016年10月の中間報告から
福島県の県民健康調査において、甲状腺がん悪性または疑いと診断された子どもたちの数は、1巡目、2巡目を合わせて174人にのぼります。このうち手術後に確定した子供たちは135人。福島県の近県でも、子どもたちの甲状腺がんが報告されています。
しかし、政府は、こうした甲状腺がんの「多発」を、原発事故の影響とは考えにくいとしており、包括的な支援策がとられていません。甲状腺がんと診断された子どもと家族は孤立し、たび重なる診察や通院費用で経済的に困窮して、進学や就職、結婚、出産などの面でも困難に直面しています。こうした状況を踏まえ、FoE Japanでは、甲状腺がんの子どもや家族の支援のあり方について、相談窓口の設置を念頭に、関心を有する市民団体や弁護士などとともに準備会合を5回開催。甲状腺専門医の菅谷昭松本市長とも3回会合をもちました。
その結果、既存の「甲状腺がん家族の会」との役割分担なども考慮し、当初念頭においた「相談窓口の設置」にあわせて、治療費や通院費などの給付を含めた経済的支援を行うための「基金」の設置が必要であるとの結論にいたりました。そこで、甲状腺がんや甲状腺疾患、その他の被ばく影響によると思われる病気に苦しむ子どもたち等への支援と、原発事故による健康被害状況の調査・把握を行なう目的で、「3・11甲状腺がん子ども基金」が発足することとなりました(代表:崎山比早子/元国会事故調委員)。
9月17日に開催した発足シンポジウムでは、特別顧問の菅谷昭さんが講演を行い、ベラルーシにおいては、チェルノブイリ原発事故後30 年たったいまでも、子どもたちに半年に1回の包括的な健診や、年3週間の保養が国家事業として行われていることを紹介しました。
基金は、寄付を募り、甲状腺がんの治療を受ける子どもたちへの給付金支援を行います。また、原発事故による健康影響の現状把握や相談業務を行っていきます。
完了報告・研究成果発表会資料より
福島県県民健康調査では、多くの子どもたちが甲状腺がんと診断されています。2017年2月までに福島県が公表した資料によれば、事故当時福島県に在住した18歳以下の子どもたちで、甲状腺がん悪性または悪性疑いと診断された子どもたちの数は184人。リンパ節転移や遠隔転移、再発など、深刻な症例が報告されています。政府は、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響による健康被害は起きないとしており、包括的な支援策がとられていない状況です。
FoE Japanは、当初、甲状腺がんなどの健康問題に関する「相談窓口の設置」を念頭に高木基金に助成金申請を行いましたが、その後、治療費や通院費などの給付を含めた経済的支援を行うための「基金」の設置が必要であるとの結論にいたり、2016年7月、「3・11甲状腺がん子ども基金」が正式に発足しました。甲状腺がんの子ども等への支援および原発事故による健康被害状況の調査・把握を行うことが目的です。代表は国会事故調査委員会の元委員の崎山比早子さん、副代表は福島原発告訴団の武藤類子さん、弁護士の海渡雄一さんです。
2016年12月から療養費給付事業を開始しました。対象は、福島県のみならず、原発事故当初、放射性ヨウ素を含むプルームが飛来したとみられる東日本の広い範囲としました。2017年3月まで、原発事故当時4〜18歳の81人の青少年に対して療養費の支援を行いました。このうち、10名が肺転移などにより、アイソトープ治療の対象でした(福島県内2人、県外8人)。基金の療養費給付事業を通じて、甲状腺がんの子どもたちおよび家族の実態が明らかになってきています。