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高レベル放射性廃棄物処分場選定手続きにおける社会的合意形成手法と安全性確認に関する研究<その2>



グループ名 原子力資料情報室 研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 澤井 正子 さん
URL http://www.cnic.jp/
助成金額 40万円

最終処分の母岩(岩塩層、粘土層、結晶質岩)が決定され、明らかに、南北の地域差がある。実質的な第1段階としての選定となっている。

高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(澤井正子さん)

研究の概要

2015年12月の助成申込書から
 脱原発を決定したメルケル政権は2013年7月、「発熱性放射性廃棄物最終処分施設のサイト選定手続きを定める法律を成立させた。このサイト選定法は、安全評価に関して100万年間にわたる最善の安全性を保証すること、サイト選定手続きは2031年までに完了すること、を目的としている。さらにサイト選定手続きの準備を2016年6月末までに行うため、(1)連邦議会のもとに33名の委員で構成する「発熱性放射性廃棄物の処分に関する委員会(以下「委員会」)を設置し、(2)委員会は、サイト候補地の除外基準、要件、考慮基準、その他の決定基準、選定プロセスの組織と手続きの要件、公衆の参加と透明性確保に関する要件等について連邦議会に「報告書」を提出し、連邦議会がこれを法律として議決すること、等を定めている。  このようなサイト選定手法が、どのように市民に受け入れられるのか、本研究はこの点に焦点を絞る。ドイツ政府や委員会メンバーからは、「理解を得る」、「一段一段合意するまで時間をかける」等の発言があるが、具体的道筋は見えない。特に高レベル放射性廃棄物が実際に貯蔵されている地域、さらにこれから選定される地域の住民との合意形成のためには、単に科学的合理性では説明できない、「適地」としての根拠が説明されなければならないだろう。さらに、安全評価期間が100万年間という、「サイト選定法」の科学的根拠も解明する。

中間報告

2016年10月の中間報告から
 脱原発を決定したドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定手法が、どのように市民に受け入れられるのかについての調査を続けています。ドイツ政府や委員会メンバーからは、「理解を得る」、「一段一段合意するまで時間をかける」等の発言がありますが、具体的道筋は見えません。  ドイツの高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016年6月27日に、「サイト選定法」に基づき「最終報告書」を採択しました。採決には、委員32名(委員長2名除く)のうち科学者グループと社会グループの16 名が議決権を持ち、2/3以上の賛成が必要です。「報告」に対し環境団体代表の1名(ドイツ最大の環境保護団体BUND 副代表)は反対、他の1名(ドイツ環境基金代表)は欠席し、残り14名が賛成して決定されました。7月5日、「最終報告書」が連邦議会に提出され公開されました。これを受けて連邦議会は、原子力法や「サイト選定法」の改正、新法の制定、最終処分関連の組織体制の変更等を行います。  『将来への責任―最終処分場選択のための公平かつ透明性の高い手続き―』というタイトルの「報告書」は、以下のような「勧告」を連邦議会に対して行っています。 1.放射性廃棄物の最終処分は地層処分とし、処分場立地地域には、可能な範囲で最善の安全性確保を図る。 2.旧処分場候補地であるゴアレーベンは、サイト選定手続きから除外されない。 3.決定の可逆性と廃棄物の取り出し可能性を担保する。 4.可能な限り高い安全性を有する1カ所の処分場サイトを3段階の手続きにより選択し、連邦法で確定する。 5.処分場候補地点の母岩は、岩塩層、粘土層、結晶質岩とする。地質学的除外条件や最低要件( 地下水、地震等)の基準等も規定する。 6.新たな処分実施体制を整備する。  一方、「報告書」公表の7月5日、ゴアレーベン現地からは12 台のトラクターがベルリンの国会議事堂前までデモ行進し、多数の反原子力団体が共同で抗議行動を行いました。また同日、ルヒョウ・ダンネンネルグ環境市民運動をはじめとして、低レベル廃棄物最終処分場のコンラートの市民団体、グリーンピースドイツなど50の環境団体が連名で抗議声明を公表しました。また、「最終報告」に関し9月11日まで意見募集が実施されました。  今後の現地の動きを確認しながら、2017年初〜3月に現地調査、ヒアリングを実施する予定です。

結果・成果

完了報告・研究成果発表会資料より
 福島第一原子力発電所事故後、多数の市民が「脱原発」を意識するようになりました。そしてその「脱原発」後の社会を考える時、放射性廃棄物、特に高レベル放射性廃棄物対策をどうするのか、という問題がおのずと導かれます。私たちの調査・研究の出発点は、「2022年脱原発」を決定したドイツでは、高レベル放射性廃棄物対策がどのように取り組まれているのか、その実相を知りたいと考えたからです。原子力発電所への賛成・反対という枠組みが解消しつつあるドイツ社会で、いわゆる「超迷惑施設」である放射性廃棄物処分場選定作業における社会的合意形成が、どのように制度や法律によって確保されようとしているのか、さらに処分の安全性はどのように確認されるのでしょうか。放射性廃棄物を発生させた電気事業者や廃棄物問題に責任を持つ連邦政府だけではなく、市民の考え方、視点も調査することを心がけました。  ドイツの廃棄物対策で特徴的なことは、廃棄物対策を検討する超党派の国会議員、科学者、宗教界、労働界、そして市民代表を交えた「高レベル放射性廃棄物処分場選定委員会」が設置され、2年近くの議論によってその方向性、枠組み等を決定し、それが法律(「サイト選定法」)として制定され、選定作業が開始されようとしていることです。ところが一方で、以前の処分場候補地であったゴアレーベン(ニーダーザクセン州)は、依然として候補地の1 つとして残され、今後の選定作業で決定された候補地と比較検討されるという“非常に変則的な決定方法(ゴアレーベン条項)”となっています。  このように“不平等な”手法について、ゴアレーベンをはじめとする多くの脱原発運動団体は、「サイト選定法」を批判しています。ドイツの市民団体は、民主性、公平性、透明性の高い社会的合意形成を求めており、あらたな処分地選定枠組みが円滑に機能できるか、不透明な部分があることは否めないでしょう。本研究は、廃棄物問題からみたドイツの「脱原発」を検証する作業となります。  なお、ベルリン、ゴアレーベン等でのヒアリングは、事情により延期となりましたが、2017年9月に実施を予定しています。特に、ゴアレーベンなど処分予定地となりうる母岩が多数存在するニーザーザクセン州では、サイト選定に強い関心をもっており、地域住民やゴアレーベンの住民団体の対応、一般市民の意識等を調査・検討します。

その他/備考


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