みんなのデータサイト |
研究成果発表会配布資料[pdf] |
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石丸 偉丈 さん | ||
http://www.minnanods.net/ | ||
60万円 |
セシウムをほとんど含まない土壌をふるいにかけている。この後、高濃度セシウム汚染土を混合して、一定の濃度の検体を作成する。
それぞれの濃度の汚染土壌を、各市民測定室が使用している測定器の機種毎の専用容器に詰め、密封したチェック検体とした。
「みんなのデータサイト」に登録している多くの測定室が参加した
高木基金「市民科学 研究成果発表会 2017」での発表の様子(村上直行さん)
2015年12月の助成申込書から
本来国がやるべき土壌放射能汚染調査が統一して行われていないことから、約30の市民測定室が参加するみんなのデータサイトでは、2014年秋より、東日本17都県をカバーする「土壌ベクレル測定プロジェクト」と命名した一斉調査を、市民主体で実施している。
放射線管理区域並み、ないしはそれ以上の汚染が広範囲に広がりながら、事実は隠蔽され、補償打ち切り・帰還促進政策が進められている中、確かな土壌測定データを広範囲に記録・公開することは非常に重要かつ急務である。その取り組みの中で、主にNaI検出器を使用しての測定で、大量のデータが十分な検証に耐えるためにも、当会が精度管理の基盤としている4段階の放射性セシウム濃度の「基準玄米」による測定精度確認以外に、土壌測定特有の精度確認の取り組みが必要とされている。
特に、(1)低濃度汚染検体の天然核種(主にウラン系列のBi-214)による誤検出・過剰検出は厄介な課題であり、測定器の機種ごとの特性の把握、全データの精度の判別、削除や補正の方法の確立と実施が必要である。
一方、(2)高濃度汚染土壌はできるだけ移動拡散させないことが原則であり、少量容器による測定が望ましい。測定器メーカーによる少量容器のための新たな効率校正には多大な費用が伴うため自主開発が必要である。このため、ゲルマニウム半導体核種分析装置で値付けした少量(100〜200ml)密封基準線源を準備し、各測定室に配布して機種ごとの効率補正係数を求めるとともに、その精度を検証していく予定である。以上の技術的課題を克服し、汚染地域で暮らす人々により正しい情報を提供し、政府の不条理に対抗して警鐘を鳴らしていく。また市民測定所の測定精度のさらなる向上と連携強化を図っていく所存である。
2016年10月の中間報告から
約30の市民測定室が参加する「みんなのデータサイト」では、土壌汚染調査が国によって統一して行われていないことから、2014年秋より「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」を市民主体で実施しています。2016年9月現在約2,400検体を測定しており、これらの測定結果が十分な検証に耐えるためにも、当会の基盤である「基準玄米」による測定精度確認以外に、土壌測定特有の精度確認の取り組みが必要です。
土壌の放射能測定には、食品測定とは別の難しさがあります。NaIシンチレーター式測定器の分解能(ガンマ線エネルギーを見分ける能力)では、土壌に含まれる天然のウラン系列核種がセシウムと見分けがつかず、セシウム値が「無いはずなのにある」または「本来の値よりも高い」ことがあります。
これらは、特に汚染濃度が低い際に影響が大きいものです。そこで、ウラン系列を一定量含み、放射能汚染の少ない西日本(広島)の土壌を基材として50kg以上採取し、ふるいで粒度を一定化したのち、小型コンクリートミキサーにかけ高濃度のセシウム汚染土を混合。こうして「セシウムをほぼ含まない土壌」、「約30Bq/kgの土壌」、「約50Bq/kgの土壌」の3種の「低汚染土壌」チェック検体(1)を測定器の機種毎の専用容器に準備しました。
一方で、高濃度の汚染土壌はできるだけ移動拡散させないことが原則であり、少量容器による測定が望ましいことから、基準線源も少量(70〜100ml)の小型容器で、「約5千Bq/kg」、「約2万Bq/kg」の2種類の「高濃度汚染土壌」チェック検体(2)を準備しました。
2016年10月以降、(1)と(2)を各測定室に回して測定し、測定機種毎の特性把握と、必要に応じデータの補正基準の確認・実施を行います。
完了報告・研究成果発表会資料より
市民放射能測定室で一般的に使用されているNaIシンチレーターによる測定では、特に土壌測定において、天然の放射性核種であるウラン系列のビスマス214などを放射性セシウムの値として誤検出する傾向などが見られ、機種によっては実際より高い値が計測されてしまうのが悩みの種です。今回の助成ではその傾向把握と問題解決のため、天然核種を含んだ3段階の濃度の土壌検体を製作してゲルマニウム半導体検出器で値付けをし、19測定室の21測定器で検証をしました。その結果、AT-1320AとCSK-3iという2種類の測定器が過大評価の傾向が強いことが明らかになり、それは測定器の解析プログラムの問題であるとほぼ特定されました。そこでそれを補正するため、γ線スペクトルデータの解析領域を絞り、セシウム137のみを単独解析して過大評価分を補正する手法について、現在検証を重ねています。
高濃度検体の測定のための精度確認と、少量容器に対応していない測定器で少量測定するための取り組みも行いました。濃度の異なる2種の高濃度土壌と灰の計3段階の検体を作製し、各測定器で測定を行ったところ、メーカー出荷時に少量容器で校正が実施されている機種では少量容器でも精度の良い測定ができることが確認されました。少量容器に対応していない測定器では、少量容器測定をするため、一律の換算係数を求めようとしましたが、現状では実際に数値をプロットした回帰式による補正が良好な結果を導き出しています。