放射能からきれいな小国を取り戻す会 |
研究成果発表会配布資料[pdf] 研究成果発表会配布資料[pdf] |
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佐藤 惣洋 さん | ||
50万円 |
放射線量測定マップ地上10cm 1回目(上)と2回目(下)
空間線量調査の様子。2地点を選定・測定し、高い方の値を採用。測定高さは10cmと100cm。
測定ボランティア勉強会の様子。
2011年12月の助成申込書から
私たちの住む福島県伊達市霊山町小国は400世帯余り、里山の恵みに守られた美しい農村地帯である。福島第一原発事故の放射能汚染により、いわゆる「ホットスポット」とよばれ、地区の90世帯が特定避難勧奨地点に指定された。しかし、指定されなかった住民には何の支援も無く、大多数の住民はその場に留まり不安な中での生活を余儀なくされている。行政等からは具体的な方策や支援はおろか、詳細な汚染の実態調査もされていない。地区内で収穫されたコメからは、国の暫定基準値を超える放射性物質が検出された。果たして、私たちの農地の汚染はどれ位か、農産物を生産し今まで通りに住み続けていくことができるのか。まず地域の実態を把握することは喫緊の課題であると考え、以下の3つの調査研究を進める。
1.空間放射線量の測定調査とマップの作成、配布
地区内の農地や宅地を100mメッシュに分け、メッシュ毎に地上10cmと100cmの約1,000ポイントの空間線量を測定し、データマップを作成する。汚染実態が一目で理解でき、住民配布により注意喚起を図る。
2.農産物の放射線量測定体制の確立
地区の農産物の放射線量を測定し、汚染実態の把握と住民間の情報共有により内部被爆の危険回避につなげる。
3.研究機関(福島大学)との連携
専門的なアドバイスを受けながら汚染度調査を進め、実態の把握と効果的な栽培管理や除染の研究につなげる。
2012年10月の中間報告から
私たちの住む福島県伊達市霊山町小国地区は420世帯あまり。里山の恵みに守られた美しい農村地帯です。かつては養蚕や果樹栽培の盛んな地域でしたが、最近は兼業で自給的農家が多くなったものの、野菜作・果樹・畜産・しいたけ栽培等、多様な農業を展開しています。
福島第一原発事故の放射能汚染により「ホットスポット」とよばれ、昨年6月には特定避難勧奨地点として地区の90世帯が指定されました。特定避難勧奨地点とは事故発生後1年間の積算放射線量が20mSvを超えると推定される地点で、世帯単位に指定されるものです。
そのため、同じ地区内に(1)賠償やさまざまな支援を受け避難する世帯、(2)支援を受けられないまま避難する世帯、(3)地域内に留まり今までどおりの生活をせざるを得ない世帯が混在する形となってしまいました。隣り合った世帯があまりにも違う条件下におかれ、地域のコミュニティは崩壊の危機に面しています。残された住民も多い中、汚染の実態調査結果や支援の有無などさえ、行政からは殆ど情報が開示されず、不安な中での生活を余儀なくされていました。
行政の対応を待っているだけでは、何一つ解決しないという危機感から昨年9月、住民有志により「放射能からきれいな小国を取り戻す会」を設立しました。会員数300名・260世帯(2012年9月末現在)と、地区の約6割の住民が活動に参加しています。今年度は地区全体がコメの作付制限を受けるなど、未だ放射能の不安を抱えての生活の中、以下の活動によって一日も早い地域再生をめざしています。
(1)地区内の空間放射線量を測定しマップを作成することで、汚染実態の理解と注意喚起を図っています。
(2)農産物の放射線量を「微量放射能簡易測定器」により測定し、情報を共有することで内部被曝の危険回避につなげています。
(3)水稲の栽培実証実験(例年通りの稲作りで移行調査研究)や土壌分析調査を行うなど、研究機関(福島大学・うつくしまふくしま未来支援センター、東京大学等)と連携しながら取り組んでおり、その結果分析を行っています。
完了報告・研究成果発表会資料より
「取り戻す会」は、食品放射能測定(週3回稼働・測定スタッフ13名)や土壌の放射能調査分析による土壌汚染度の把握の他、以下のような活動を行いました。
●空間放射線量測定マップ作成
伊達市は2011年9月に第1回放射線量測定マップを各戸配布しましたが1kmメッシュの為、それがどこのデータなのか実感がなく、その値も高いところで毎時3.5μSv以上と示すだけで、実際の線量は不明でした。そこで取り戻す会では、地区内の農地や宅地を100mメッシュで分割し、メッシュ毎に2地点、地上10cmと100cmの空間線量を測定し、原則高い方のデータをもとに測定マップを作成しました。測定の結果、地区内が一様の汚染ではなく地区の南部や北部は比較的線量が低く中心部が高いこと、さらに高濃度の所は地区の各所に点在していることも判りました。
●米の試験栽培
小国地区が2012年に米の作付制限になったことを受けて、その原因究明と営農意欲の継続のために、伊達市政アドバイザーの東京大学根本圭介教授はじめ福島大学など多くの大学の協力を得て、例年通りの栽培管理方法による米の試験栽培を地区内で行ました。このような試験栽培方法は福島県内でも唯一のものとなりました。試験は小国地区内で41筆60枚、水張面積で約4.7haの圃場、うち5枚は農水省指導のセシウム吸収の低減資材(ケイ酸カリ及びゼオライト)を10aあたり200kg施用、残り55枚は低減対策を行わず例年通りの施肥管理と水管理を行いました。
結果として、(1)出穂期における茎葉のセシウム濃度を測ることで玄米のセシウム濃度の予測ができること、(2)土壌の交換性カリウム濃度がある程度高いと吸収しにくくなること、(3)低減対策にケイ酸カリの効果が認められたことなどが解りました。ただし、土壌のカリウム濃度が比較的高いにも関わらず、イネがセシウムを多く吸い上げてしまうといった「はずれ値」水田も存在することも解り、用水の影響(特に懸濁体セシウム)が大きく関与している可能性があり、2013年も東京大学や福島大学で水系と箇所を絞って引き続き調査研究をしています。
●調理法による食物のセシウム低減対策
現在、調理法による食物のセシウム低減の効果を確かめる研究を2012年11月より進めています。