海の生き物を守る会 |
研究成果発表会配布資料[pdf] 研究成果発表会配布資料[pdf] |
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向井 宏 さん | ||
http://e-amco.com/ | ||
30万円 |
神奈川県三浦市の天神島での砂浜海岸生物調査の研修会の様子
新潟県柏崎市荒浜海岸での砂浜海岸生物調査の研修会の様子
『砂浜フィールド図鑑(1)「日本のハマトビムシ類」』。海の生き物を守る会WEB サイト(http://e-amco.com/) にて頒布しています
2014年12月の助成申込書から
市民と科学者の協同による全国の砂浜海岸生物調査を実施する。できる限り多くの砂浜海岸を調査し、日本のほぼ全体の砂浜海岸の生物や環境の実態を明らかにする。その結果から、日本の砂浜における生物多様性の特徴と生物の分布特性を解明し、ダム・砂防ダム・河川改修による河岸のコンクリート化・港湾施設による砂の流れの断絶・巨大防潮堤建設計画に見られるような生物や環境保全を無視してきたこれまでの沿岸の保全管理政策の問題点を指摘し、それを解決するための環境と生物多様性を保全する方向での提言をまとめることを目的とする。
そのために、市民による調査者の養成のために、研修会を実施する。また、砂浜海岸でもっとも普遍的に見られるハマトビムシ類の分類と同定の方法を冊子にまとめること、各地域で主に見られる貝類の図鑑を作成することなどで、市民による調査の精度向上を目指す。また、とくに日本の砂浜海岸で守るべきところを選び出し、保全を呼びかける。
2015年10月の中間報告から
当会では、市民と科学者の協同による全国の砂浜海岸生物調査を実施しています。その結果から、日本の砂浜における生物多様性の特徴と生物の分布特性を解明し、ダム、砂防ダム、河川改修による河岸のコンクリート化、港湾施設による砂の流れの断絶、巨大防潮堤建設計画に見られるような生物や環境保全を無視してきたこれまでの沿岸の保全管理政策の問題点を指摘し、それを解決するための環境と生物多様性を保全する方向での提言をまとめることを目的としています。
そのために、砂浜海岸生物調査の実施および研修会の開催、ハマトビムシ類の分類と同定の手引きの作成、「守りたい日本の砂浜海岸」の選定、沿岸管理政策への提言などを行っています。今年度のこれまでの活動としては、以下のようなことを行いました。
1.砂浜海岸生物調査の実施
一般の方々に呼びかけて全国の砂浜で生物調査を行い、調査票を提出してもらっています。全国の砂浜海岸で調査が空白の海岸については、海の生き物を守る会として、調査を実施しています。とくに島嶼部の調査がほとんど実施できていないので、重点的に実施していきます。
8月までに、砂浜海岸生物調査は5ヶ所で行われ、調査票13枚が提出されました。それ以外にも、携帯電話やスマートフォンで海岸の生物を報告するシステムを作り、報告してもらうことにしましたが、そのシステムを通して、8月までに報告された件数は359件でした。また、2015年10月には、神奈川県三浦市の天神島で、砂浜海岸生物調査の研修会を行いました。
2. ハマトビムシ類の分類と同定の手引き
全国の砂浜海岸にはかならず生息しているハマトビムシ類は、分類が難しく、同定されることが、これまでほとんどありませんでした。ハマトビムシ類の分類を専門家の協力を得て、同定の手引きを作成し、年度内に出版する予定です。
3.沿岸管理政策への提言をまとめる
12月18日(金)-19日(土)に、奄美大島の砂浜海岸の消失と採石場のサンゴ礁への影響についてのワークショップを、「自然と文化を守る奄美会議」との共催で行います。沿岸管理における問題点をまとめ、行政に提言を行うことを予定しています。
完了報告・研究成果発表会資料より
砂浜は独特の生態系を持って生物多様性に貢献しています。しかしダムの建設などによる砂の供給減少によって砂浜は減少・消失し続けています。それにもかかわらず、砂浜の生物相は環境省のモニタリング調査にも含まれていません。そこで、海の生き物を守る会は市民と研究者が共同して全国の砂浜調査を実施しています。
しかし、一般の理解は進んでおらず、協力者も多くありません。これまで127 カ所の砂浜で240枚の調査票が作られました。目標(500カ所) にはまだ遠いです。そこで協力者を増やすために新潟と神奈川で研修会を実施しました。
砂浜調査で困難さの原因となっている生物の同定の助けとなるように、『砂浜フィールド図鑑(1)「日本のハマトビムシ類」』を専門家の指導で刊行しました。これはハマトビムシ類の日本で初めての図鑑です。砂浜海岸生物調査については、今後も一般に呼びかけて、1000枚の調査票と500カ所以上の砂浜調査を達成した上で、最終的な報告書「日本の砂浜とその生きものたち」を刊行したいと思います
また、海岸管理の現状とNGO の対応を話し合うためにシンポジウム「市民調査を考える」(東京)とワークショップ「奄美の海の危機〜サンゴ礁の崩壊と砂浜の消失〜」(奄美)を開催、奄美大島では講演会も実施しました。このワークショップに基づき、砂浜消失の原因と考えられる海砂採取を禁止するよう鹿児島県知事、環境大臣、経済産業大臣に要望書を提出しました。同時に採石事業が沿岸の海洋環境に与える影響についても指摘して、採石法に環境保護の観点を入れるよう、経済産業省に申し入れました。海砂採取による砂浜の減少は、九州や沖縄でも広く問題がありそうです。今後、海砂採取の法律の改正や各県への禁止への働きかけを進めていきたいと思います。