長島の自然を守る会 |
研究成果発表会配布資料[pdf] |
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高島 美登里 さん | ||
http://nagashimanoshizen.soreccha.jp/ | ||
80万円 |
新たな手法によるカンムリウミスズメの生態解明:原発予定地から南西約3,5劼粒ぐ茲3個体を捕獲し、3羽とも抱卵中の成鳥であることを確認した
2013年3月29日 カンムリウミスズメ個体数調査チームの海外研究者
2011年12月の助成申込書から
上関原発計画をめぐる情勢は3月11日の福島第一原発事故を受けて大きく変化しました。直前の2月21日には中国電力が埋立予定海域(放水口)に土石を投入し、海域埋立工事を再開するという緊急事態にありました。3月16日以降、山口県知事の要請を受け中国電力は埋立工事を中止しています。しかし、中国電力も上関町内の推進派も、1日も早い工事再開を目指しています。3学会の研究者(日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会)が“奇跡の海”と称賛する生物多様性のホット・スポットは依然、存続の危機にあります。
上関および周辺地域は海洋保護区やユネスコの自然・文化遺産として登録されるべき価値を有しています。そのため、2012年度は以下の調査研究や普及活動を行う予定です。
1.生態系の調査を行い、生物多様性の価値の科学的検証を行う。
カンムリウミスズメ(国の天然記念物・IUCN指定絶滅危惧種)やオオミズナギドリ(瀬戸内海における繁殖を世界初確認)の集中調査、繁殖可能性や生息条件(移動範囲・採餌・海水温との関連etc.)をより深く解明する。
2011年度は新たに魚類調査や長島周辺島嶼部の調査に着手し、海洋公園、ユネスコの生命圏リザーブや世界遺産登録に向けてデータを収集する。
2.DVD「長島の自然」改訂版の作成を行う。
3.ユネスコの生命圏リザーブ登録に向けた学習会&シンポジウムの開催。
4. 2011年度調査で未利用海藻(クロモズク・フトモズク・アカモクetc.)の生育が明らかになった。2012年度は実用化に向けた生態把握調査により、商品化を手がけ、町の活性化に貢献する。
この調査研究結果を活用し、今こそ上関原発を中止し「将来に向けて持続可能な人と自然が共生」する地域のモデルとして次世代に残す歴史的責任があります。将来に禍根を残す原発建設によって貴重な財産を失わぬように世論喚起を行います。
2012年10月の中間報告から
上関原発をめぐっては、中国電力が、福島第一原発事故直前の2月21日に放水口側予定地の一部にわずかな玉砂利を投下しましたが、3月16日以降、現在に至るまで公有水面埋め立て工事が中断しています。しかし、埋立免許失効直前の2012月10月5日、中国電力は今後3年間の埋立免許延長申請を出しました。知事は「現段階では土地利用計画が明らかでないので許可はできない」と発言しており、失効の公算大ですが、中国電力は「上関原子力発電所が必要という考えは変わっていない。その現状を維持したいということで、免許の延長を申請した」としており、国のエネルギー政策の中で上関原発計画の中止が明記されるまで予断は許しません。
長島の自然を守る会は最近改訂された第4次環境省R.D.B.(レッドデータブック)において、原発予定地やその周辺に生息する希少な生物として、ナガシマツボ(環境省R.D.B.絶滅危惧I類)をはじめ、絶滅危惧I類6 種、II類11種、準絶滅危惧16種、情報不足1種が登載されたのを受け、環境面からの原発建設中止を申し入れ等で強く訴えています。
調査の進捗状況はカンムリウミスズメ(国の天然記念物・IUCN指定絶滅危惧種)について2012年4月に海外研究者と共に夜間調査を実施し、夜間における生息を確認しましたが、繁殖確認はできなかったので、2013 年に向け、海外研究者との、より精度の高い調査を準備中です。オオミズナギドリ(瀬戸内海における繁殖を世界初確認)については7個体から新たなデータが得られ、宇和島個体群の解明が進みました。2012年6月に新たに魚類調査に着手したところ、33種が確認され、中間温帯区に属することがわかりました。冬期に黒潮の影響が弱まるため、上関周辺では水温が下がるためです。また、予定地周辺の島嶼部である宇和島で貝類・植物・昆虫、祝島での植生調査に着手しました。今後、バイオロギング(※)研究会の研究者と共同で最新の機器を使ったスナメリの生息調査についても検討中です。
(※)生物に記録装置をとりつけて行動を分析する調査法
完了報告・研究成果発表会資料より
上関原発計画をめぐる情勢は、2011年3月11日の福島第一原発事故後、原発敷地造成のための埋立工事が中断され、動きが止っていました。しかし中国電力が2012年10月5日に埋立免許の延長申請を出し、これを受けた山口県知事は、安倍政権の成立を経て、2014年4月まで延長申請に対する判断を先送りにしました。今後、国のエネルギー政策の動向次第で埋立再開・建設への動きが危惧されます。
また、もし原発計画が中止されても、その代りに他の大規模開発計画が浮上する恐れがあり、生態系の価値の科学的検証が急務です。
2012年度の主な調査は、以下のようなものです。
1.カンムリウミスズメ(国の天然記念物・IUCN 指定絶滅危惧種)調査
2012年4月に海外研究者とスポットライトを使った夜間調査を行い、天田島や鼻繰島周辺で計4羽、初めて夜間における生息を確認しました。2013年3月には海外研究者と国内研究者と「守る会」サポーターのべ100 名のチームでテレメトリ調査(発信機による調査)を行い、2羽に装着しましたが、その後の追跡調査で繁殖地の確認はできませんでした。しかし、調査のための捕獲個体3羽すべてに抱卵斑があることが確認できました。上関海域での繁殖可能性が高まったので、来年度に向けて繁殖地を解明するための様々な手法による調査を準備中です。
2.オオミズナギドリ(内海における繁殖を世界初確認)調査
2011年度調査で、親鳥の採餌域が50km以内と世界的に見ても極めて狭いことを確認しました。2012 年度調査でも、採餌域は周防灘西部に集中していました。また他地域ではオスの飛翔能力が高いため様々な海域を利用するのに対し、宇和島では飛翔率はメスの方が高く採餌海域も広いなど採餌パターンが他地域と異なりました。2013 年度は血液検査などで他地域の個体群との交流実態を調査する予定です。
3.魚類調査
2012年6月に新たに魚類調査に着手し、冬期に黒潮の影響が弱まり上関周辺では水温が下がるため、中間温帯区に属することがわかりました。