泡瀬干潟を守る連絡会 |
研究成果発表会配布資料[pdf] |
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前川 盛治 さん | ||
http://awase.net/ | ||
50万円 |
10ヶ所の調査地点
泡瀬干潟の埋立計画
2011年12月の助成申込書から
沖縄県沖縄市の東海岸にある泡瀬干潟・浅海域で、埋立工事が再開されました。今年度(2011年度、2011年10月〜2012年3月)の工事は、おおよそ次の通りです。
国(沖縄総合事務局)の工事
1.新港地区東埠頭の浚渫工事
2.東埠頭の浚渫土砂を泡瀬干潟・浅海域の第1区工事区域に「空気圧送船」で流し込む。
3.第1区工事区域の護岸の嵩上げ
沖縄県の工事
1.第1区工事区域の人工ビーチ突堤の延長工事
以上示したように、今年度の国の工事は、「空気圧送船」での浚渫土砂(ヘドロ状のシルト質の土砂)のパイプでの流し込みであり、濁りの発生、外海への拡散が懸念されます。事業者は、護岸の下に「汚濁防止膜」を敷設してあるので、外海への影響はない、としていますが、外海の干満と同時に護岸内の干満も起こっており、海水の出入りはあることから、護岸内の「濁り(SS)」「濁度(FTU)」は外海へも拡散すると思われます。
泡瀬干潟・浅海域は、環境省がラムサール条約登録湿地の候補地に選定しているところであり、工事による影響が懸念されます。現に、環境省は2012年のラムサール条約COP11の国別報告書案に「沖縄県の泡瀬干潟において、人工島を作る大規模な埋立計画が進んでいる等、一部において生態学的特徴の部分的な喪失が懸念されている。」と記載しています。
以上のような理由から、第1区埋立工事区域の周辺の10箇所のポイント(埋立区域の南側5ポイント、北側5ポイント)で、月1回海水を採取し、「濁り(SS)」「濁度(FTU)」のデータをとり、工事の影響を調べます。
2012年10月の中間報告から
沖縄本島中部にある泡瀬干潟の埋立事業については、市民が埋立工事への公金支出差し止めを求めて提訴した第一次訴訟で、経済的合理性が無いことを認め、公金支出差止を命じるの判決が2009年に確定して原告側が勝利し、また、「コンクリートから人へ、無駄な公共事業見直し、泡瀬干潟埋め立て見直し」を公約した民主党政権が誕生したことで、泡瀬干潟埋立は中止と誰もが思っていました。しかし、2011年10月から埋め立て事業が再開されてしまいました。沖縄市長の選挙公約違反、民主党政権のマニフェスト放棄、普天間基地の辺野古への移設のためのアメ政策が背景にあります。
問題点だらけの埋立工事再開ですが、その中止のために様々な取り組みをしなければなりません。
その一つとして、工事再開(空気圧送船による浚渫土砂の埋立地への流し込み)による、泡瀬海域の「濁り・濁度」の調査を行うことにしました。事業者も年1 回開かれる環境監視委員会で濁り調査を公表していますが、それでは、工事進行に伴う「濁り・濁度」は把握できないし、対応もできないので、独自の調査を実施することにしたものです。
2012年8月〜2013年3月には、新しく埋め立てられる予定のマリーナ地域の浚渫も予定されていることから、工事区域周辺の泡瀬海域の「濁り・濁度」は特に重要になります。
調査は、工事の行われている期間、月1回、調査船を使い、海水を採取し、名桜大学の協力者に依頼し、「濁り・濁度」を測定しています。異常値が確認されれば、記者会見などで公表します。
完了報告・研究成果発表会資料より
今回の調査では、泡瀬干潟埋立工事区域周辺の10地点において、繰り返し海水を採水し、浮遊物質(SS)および濁度(FTU)を測定しました。浮遊物質および濁度の調査から、以下のことが示されました。
(1)濁り(浮遊物質)の調査では、第2 回調査(2011年12月1日)で調査地点8と10において、事業者の監視基準に達するほどの数値が出ました。しかし、継続して異常な数値が検出されることはありませんでした。
(2)濁度の調査では、第2回調査で調査地点10、第4回調査で同1、2、4、第7回調査で同3、10、第8回調査で同10、第9回調査で同7で、それぞれやや高い数値が出ました。しかし、いずれの調査地点でも継続的に異常値が検出されることはありませんでした。
(3)浮遊物質および濁度の調査は、事業開始後、中城湾における海藻の収穫高が激減したり、底質の明らかな変化が生じたりしていることから、我々が重視して実施したものです。連続調査の結果は、上に示したとおり、工事の影響が限定的であることを示しました。その原因として、私たちがこれらの調査を公然と実施したため、事業者側も工事を慎重に実施したものと推測されます。高木基金の助成を得て行った調査が、違法な操業の監視につながったものと考えられます。
(4)2012年度については、当初、新港地区東埠頭の浚渫と、その土砂の泡瀬埋立地への揚土(空気圧送船による浚渫土砂の投げ捨て)が、10月から実施される予定でしたが、実際には、2013年2月〜3月中旬までのみ実施されました。このことから、海域への影響は当然少ないものでした。
(5)ところが、2012年度までに工事に大幅な遅れが発生していることから、事業者は、2013年度〜2015年度には、その工事の遅れを取り戻すために、毎年80万m3という多量の浚渫土砂の投げ捨てを予定しています。したがって、2013年度に「濁り・汚濁調査」を継続実施することは極めて重要と思われます。