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草の根市民による沖縄のジュゴン保護活動の構築



グループ名 北限のジュゴンを見守る会 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 鈴木 雅子 さん
URL
助成金額 20万円

ジュゴンの食み跡の記録中

ジュゴンの食み跡

地元調査員による普及活動

研究の概要

2010年12月の助成申込書から
 世界の分布の中で最も北に生息する沖縄のジュゴンはその数わずか数十頭と言われ、国の天然記念物としてまた絶滅危惧種として厳正に保護されなければならないが、米軍再編に関わる日米安保体制の中で、その最も重要な生息地に新たな米軍基地の建設という脅威に曝されている。この沖縄のジュゴンの保護のためには、再発見されてからすでに10年以上かけても有効な保護策の打てない国に任せるのではなく、地元市民が主体となって保護策を講じなければ近い将来絶滅するのは明らかである。  この調査活動では、市民自身が担って行くジュゴン保護の方策を、沖縄のジュゴンにまつわる歴史と文化および海外の保護策も参考にして検討し、具体的な中長期計画の作成をめざす。また専門家の協力を得て、現地で実行可能な調査手法により、現存するジュゴンの保護及び、生息環境の保全に向けたデータを集積するために以下の調査を行う。  加えて、市民による保護活動の地盤を作っていくための啓発活動として、一般向け食み跡観察会や学習会を開催、なおかつ積極的に地元行政へジュゴンの生息地保全を働きかける。 1)ジュゴンの生息環境を明らかにするためのジュゴンの食み跡モニタリング調査の継続。 2)保護活動の先行事例と地域文化について聞き取り、文献調査。 3)ジュゴンの保護を具体化するための中長期計画の作成。 4)持続的な調査への協力を得、また有効な保護方策の受容を可能にするために必要な地域住民の啓発活動(一般向けの食み跡観察、陸上学習会、講演会)。 5)環境マニフェスト市民の会活動などを通じた積極的な地域行政へのコミット

中間報告

2011年9月の中間報告書から
 世界の北限に生息する沖縄のジュゴンは絶滅の危機に瀕しているが、その最も重要な生息地は米軍基地建設の脅威に曝され、国は有効な保護策を打てないでいる。そのような状況の中、地域市民を主体としたジュゴンの生息環境のモニタリング調査を2006年以来続けている。現在、米軍基地の建設問題は政治的な理由で辛うじてペンディング状態で止まっているが、その影で進行する緊急な課題は、昨今の災害による「防災」の名の元のジュゴンの生息への脅威である。2000年以後、沖縄島の海岸線の劣化は甚だしく、ジュゴンの生息可能な自然海岸はほとんど残されていない。それ故に、すでに絶滅した生物の「種」は数えきれないが、その現実を顧みることなく、土木行政が主眼の「防災対策」においては、日常的にジュゴンが活用している餌場への護岸建設がすでに着手目前である。今年の前期活動は、地球規模の気候変動の影響で台風の来襲も多発し、食み跡調査の中止が相次ぎ、予定されていたデータ収集はできなかったが、日常的なジュゴンの生息環境へのアプローチを活かして、国際的な保護動物の保護への理解を地元住民及び自治体に周知することや、安全を基本とする海の調査に備えて、調査員の安全対策と訓練に力を注いだ。後期については、条件に備えつつデータの収集に努めて、防災の専門家を交えた地域の安全と環境保全をテーマにした学習会を該当地区で開催し、地元住民に理解を求めたい。

結果・成果

完了報告から
 世界のジュゴン生息域の中で北限にある沖縄のジュゴンは絶減の危機に瀕していますが、その最も重要な生息地は米軍基地建設の脅威に曝され、政府は有効な保護策を打てないでいます。そのような状況の中、地域市民を主体としたジュゴンの生息環境のモニタリング調査を2006年以来続けています。  現在、米軍基地の建設問題は政治的な理由で辛うじてペンディング状態となっていますが、その影で進行する緊急な課題は、昨今の災害による「防災」に名を借りたジュゴンの生息への脅威です。2000年以後、沖縄島の海岸線の劣化は甚だしく、ジュゴンの生息可能な自然海岸はほとんど残されていません。それ故に、すでに絶滅した生物の「種」は数えきれませんが、その現実を顧みることなく、土木工事が主眼の「防災対策」においては、日常的にジュゴンが利用している餌場への護岸建設計画が進行中です。2011年の前期活動は、台風の来襲も多く、食み跡調査の中止が相次ぎ、予定されていたデータ収集は困難でしたが、地元住民および自治体へのジュゴン保護の周知徹底をはかることや、安全を基本とする海の調査に備えて、調査員の安全対策と訓練に力を注ぎまし た。後期は、天候にも恵まれ、広範囲なデータの収集もでき、調査メンバーも多角的な分野から集合するようになりました。また、防災と水環境システムの専門家を交えて総合的な環境保全をテーマに据えた学習会を開催するなど、地元の土木行政と住民を対象に啓蒙活動を実施しています。  現在、沖縄のジュゴンが主たる生息域としている餌場を中心に各箇所に適した調査の手法で継続的なモニタリング調査を行っています。現在は、陸上の水循環や集落の水資源管理を含めてのジュゴンの生息環境の総体的な解明につなげ、防災対策の中にしっかりとした沿岸環境の保全を位置づけるべく、研究者と連携し、沖縄県行政と地元住民との合意を目標に新たな護岸設計案を提案したいと考えています。  沖縄の基地問題という前提の中で、常に脅かされるジュゴンの生存は、単なる「ジュゴン保護区の設定」スローガンを叫んでいれば解決する問題ではありません。ともすれば「保護区運動」や「世界自然遺産登録運動」が沖縄の自然保護運動の象徴のように受け取られますが、そこには地元住民自身の環境保全への意識が欠落しています。沖縄県民自身が自らの依って立つべき自然や文化の価値を再認識しない限り、例え「保護区」や「世界遺産」に一部指定されても『観光』のレッテル貼りに寄与するのみであり、沖縄の自然は一方的に「本土」に消費され続け、沖縄の自然環境の未来に新たな展開は望めません。  すでに沖縄ジュゴンの生息数は絶減のカウントダウンの域にあります。そのような現状において、私たちがモニタリングしている地域個体群も、米軍基地の移設問題いかんによっては消滅する可能性もあります。私たちは彼らの食み跡(生息の証拠)が続く限り、周年のデータを記録し、沖縄ジュゴンの生息環境の要素を明らかにしつつ、沖縄ジュゴンの歴史を記録し続けます。そして沖縄の他地域に生息するジュゴンの痕跡をも明らかにして、ジュゴンの生息できる沿岸生態系の復元に向けての研究と実践を試みます。また、同時にジュゴンと人との関係への研究を深め、今後、名護市が策定する「生物多様性地域戦略」を含めて市民、県民にとってのジュゴンの意味(沖縄の生物多様性)を正面から問う作業に着手します。

その他/備考


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