ピープルズ・プラン研究所 |
研究成果発表会配布資料[pdf] |
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山口 響 さん | ||
http://www.peoples-plan.org/jp/ | ||
20万円 |
米軍専用地帯はほぼ遊休化しており、通常は出入りが自由。
ラモン・デラクルーズ・テニアン市長へのインタビュー。
2010年12月の助成申込書から
米軍の世界的再編に関連して、日米両政府は「再編実施のための日米のロードマップ」を2006年5月に発表し、その中で、「沖縄の負担を軽減する」との名目の下、在沖縄米海兵隊8,000人とその家族9,000人をグアムに移転し、そのための財政的負担を日本も担うことが決まった。また、昨秋の民主党政権成立以降は、普天間基地の移設先として、グアムや北マリアナ諸島の存在が注目されるようになってきた。
私たちはすでに、2009年度、2010年度と、高木基金からの支援を得て調査を行ってきたが、その中から出てきた以下の論点を中心に、さらに継続して調査を行いたい。
第一に、日本との関わりである。日本国際協力銀行(JBIC)、日本の地方自治体の公共事業部門(水関連など)、グアムと姉妹都市・経済連携の関係にある日本の自治体、グアム現地の日系観光産業など、グアムとの関係を持つ日本の主体は少なくない。海兵隊移転計画が進展する中でそれらのつながりが具体的にどのようなものになっているのかを明らかにする。
第二に、射撃訓練場の新設が予定されているパガット地区をめぐる問題である。同地区の米連邦による接収に対しては、自然環境や文化の保護の面から強い反対論がある。
第三に、グアムの土地接収の歴史について調査を行う。これはたんなる過去に関する研究ではなく、その歴史が現在の海兵隊移転問題とどのように関連しているのかが焦点である。
第四に、今年度は、調査対象として、あらたに北マリアナ諸島を加えたい。日本・沖縄において、テニアン島を普天間基地の移転先候補とする議論が強まっていることに対応したものである。
日本の市民や納税者として、移転計画が現地に与えうる影響を実証的に明らかにし、計画の是非をめぐる議論をもっと広く起こしていく必要がある。
完了報告より
高木基金からの助成を受けて、2009〜10年に実施した調査では、海兵隊グアム移転計画そのものが現地生活や自然環境に与える悪影響の分析や、移転反対派に対する聞き取り調査などを重視していましたが、2011年度の調査は、それに加え、移転計画の遅れと、そのことによって米軍増強歓迎派がどのような状況に置かれているのかについても視野に入れました。
2011年度中に、通算3回目の現地調査を行いましたが、今回は初めて、グアム移転に伴う海兵隊訓練場として想定されているテニアン島(北マリアナ自治領)を訪問先に加えました。グアムでの現地調査では、移転事業に関わりを持つ複数の日系業者への聞き取りを行い、業者としても、移転計画が予定どおり進捗しないことで深刻な事態を迎えつつあることが明らかになりました。すなわち、移転計画は、今のところ、移転懐疑派・推進派のいずれに対しても利益をもたらしていないのです。
テニアン島の現地調査では、テニアン市長を初めとして10人以上への聞き取りを行うと同時に、土地の3分の2を米軍にリースしている島の状況を視察しました。聞き取りでは、経済的な苦境から脱出する手段として米軍の誘致に期待する意見が確かにある一方で、このところ島内での米軍との接触機会がほとんどない島民にとっては、非常にあいまいな形でしか経済活性化の道筋が見えていないこと、誘致派の中にも、「米軍が特に使う気のない土地であるならば、返還してほしい」という感情もあることが明らかになりました。
『季刊ピープルズ・プラン』誌上、およびピープルズ・プラン研究所ウェブサイトでの定期的な報告が2011年度のほぼ唯一の成果発表の場でしたが、今後、包括的な報告書の作成・発表に代えて、グアム移転に関する書籍の執筆に取りかかる予定です。