六ヶ所再処理工場放出放射能測定プロジェクト |
研究成果発表会配布資料[pdf] 研究成果発表会配布資料[pdf] |
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古川 路明 さん | ||
80万円 |
2010年12月の助成申込書から
六ヶ所再処理工場は、2006年3月31日から、使用済み燃料を対象としたアクティブ試験を開始した。高レベルガラス固化体製造工程の事故・トラブルのため竣工時期が度々延期され、現在は2012年10月の予定となっている。
六ヶ所再処理工場放出放射能測定プロジェクでは、再処理工場周辺の環境試料の採取、測定を、市民と共同研究者によって行う。測定対象核種は、ガンマ線測定(海砂、松葉)、トリチウム(β線、大気中・海水)、炭素14(β線、米・松葉)で、一部委託測定を実施する。
六ヶ所再処理工場は、アクティブ試験全体で425トンの使用済み燃料をせん断した。その結果放出された放射能は、気体放射能として、クリプトン85が220万キュリー、トリチウム500キュリー等、液体廃棄物としてトリチウム6万キュリー等が、放出された。
県・事業者等の測定では、クリプトン85が工場敷地内9カ所、周辺8カ所のモニタリングポストで頻繁に確認されている。また尾駁沼では、ヨウ素129が魚や海藻で濃縮されている。今年度は、事業者、行政等の測定データ等も包括的に収集し、批判的に検討しながら、本調査研究の結果と合わせて、工場周辺の汚染の状況を明らかにする作業に取り組む。
工場の竣工以降は、年間800トンの使用済み燃料がせん断される予定で、汚染の拡大は必至である。汚染の全体像をわかりやすく解説する「リーフレット、またはマップ」等を作成する。
完了報告より
六ヶ所再処理工場は高レベル廃液ガラス固化工程の試験で失敗を繰り返しています。2012年1月にガラス固化工程の試験運転の再開を試みましたが、それもまたトラブルを起こし、試験は停止しています。現在の竣工予定は2012年10月でしたが、事実上不可能となっています。さらに昨年3月11日に発生した福島第一原子力発電所炉心溶融事故のため、原子力政策大綱等の見直し作業の中で、再処理工場計画自体が放棄される可能性すら出てきています。
六ヶ所再処理工場に起因する環境汚染を調べる本調査研究は、2004年以来、工場のアクティブ試験前、さらに本格稼働前の基礎的測定データの蓄積を目的として取り組んできました。測定は松葉、米、海砂、海水等について実施しています。2010年秋までの調査では、再処理工場由来の放射能汚染は検出されていません。
ところが、福島第一原発事故による大量の放射能放出は、東日本全体を覆いました。その影響で、2011年度の環境試料(松葉、海砂)に関連して、六ヶ所再処理工場周辺での松葉のガンマ線測定において、福島第一原発を起源とするセシウムの沈着によると推定できる測定値が確認されました。
六ヶ所再処理工場計画が政府の諸機関で議論されています。その動向を注視しているのが現状です。現在進められている議論の中には、数年間の「保留(モラトリアム)」論もあり、政府の対応を見極めながら、測定体制の今後の計画を考えていきます。委託測定には、相当な費用が必要となりますが、最低限、協同研究者との測定体制を維持したいと考えています。
一方、福島第一原発の放射性廃棄物への対応が、六ヶ所に影響する懸念もあります。放射性廃棄物が集中する六ヶ所村の現状と将来を見据えた測定体制の構築についても、地元からの要請があります。