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ニッケル鉱山開発および製錬事業地周辺における重金属(六価クロム等)による水質汚染と現地コミュニティーの健康リスクに関する調査



グループ名 FoE Japan 開発金融と環境チーム 研究成果発表会配布資料[pdf]
研究成果発表会配布資料[pdf]
代表者氏名 波多江 秀枝 さん
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助成金額 50万円

2010年10月の現地調査にて河川水採取を予定している現場の様子(以前の現地調査より)

2010年10月の現地調査にて水採取を予定している感潮域の様子(以前の現地調査より)

2010年10月の現地調査にて予定している現場での六価クロム簡易検知管による検査の様子(以前の現地調査より)

トグポン川での水サンプルの採取(2011年10月21日、FoE Japan撮影)

トグポン川感潮域での採泥器による底質の採取(2011年10月21日、FoE Japan撮影)

研究の概要

2010年12月の助成申込書から
 日本の企業や公的機関が関わり、フィリピンのパラワン島南部で行なっているニッケル鉱山開発、および、ニッケル製錬事業地の周辺に暮らす地元住民らは、これまで、ニッケル開発事業による様々な環境社会影響に対して懸念を抱いてきた。その一つに健康の悪化が挙げられる。その原因特定の試みの一つとして、FoE Japanが共同研究者の協力の下、事業地周辺における飲料水、河川水の水質分析を実施したところ、比較的高濃度のニッケルやクロム、また、日本の環境基準を越える六価クロムが検出されるなど、重金属による水質汚染の可能性が示唆される結果が出た。しかし、事業者は鉱山や製錬の工程に起因するそれら重金属の排水を経由した排出を認めたものの、「フィリピンの排水基準を満たしており問題ない」との認識を示している。また、鉱山および製錬所における立ち入り調査が未実施のため、汚染源の特定や汚染メカニズムの解明までには至っていない。  本調査では、地元住民の将来にわたる長期的な健康被害の未然防止と安全・生活の確保という視点から、こうした水質汚染の原因特定を進めるため、事業地周辺のより詳細な水質分析を継続的に行なっていく。合わせて、底質や生物試料の分析も行う。また、事業地周辺において高濃度で検出された重金属がヒトの健康や水圏生態系に与える影響に関し、主に文献調査を行なう。分析・調査の結果は、地元住民や日本の市民に情報を提供・共有するだけでなく、事業者と一層の情報公開や透明性等に関して話し合う材料とする予定である。

中間報告

2011年9月の中間報告書から
 ニッケルは、ステンレス等に利用される現代の生活に欠かせないレアメタルの一つですが、日本の市民も恩恵を受けているそのニッケルの一部は、日本企業がフィリピンで鉱山開発や製錬を行なっています。これまで、そのニッケル開発事業地の周辺河川等で、日本の環境基準を越える重金属(六価クロム等)が検出されており、それが、鉱山開発、もしくは、最新の製錬技術の利用に起源を発するものか、あるいは、ニッケル開発とは関連のないものか――依然として、その原因の解明には至っていません。  本調査では、フィリピン当地の住民の長期的な健康被害の未然防止と安全・生活を確保すべく、その水質汚染の原因特定に向け、共同研究者、ならびに、現地NGOと、現地調査の準備を進めています。10月下旬に決まった第1回目の現地調査では、事業地周辺の水(地下水、河川水等)、底質、海草、貝類等の採取を行なう予定です。現在、こうしたサンプルの採取をニッケル開発事業地の敷地内でも行なえるよう、日本の関連企業との交渉を続けるとともに、「責任ある」対応を求めているところです。  また、これまで、六価クロムの人体への影響や、六価クロムが原因で起こった皮膚病等の日本国内での事例、各国の六価クロムの毒性に関する認識や規制等に関し、情報収集を行なっています。今後、フィリピン当地の住民の健康にもたらしうる短期的および長期的な影響等について把握するため、更に文献調査を進めていく予定です。

結果・成果

完了報告から
 日本の企業や公的機関が関わり、フィリピンのパラワン州バタラサ町リオツバ村で進められているニッケル鉱山開発、および、ニッケル製錬事業地の周辺では、これまで、日本の環境基準を越える六価クロムが検出されるなど、重金属による水質汚染の可能性が示唆されてきました。本調査では、フィリピン当地の住民の長期的な健康被害の未然防止と安全な生活を確保すべく、その水質汚染の原因特定に向け、共同研究者の協力を得て、事業地周辺の飲料水、河川水の水質分析と底質分析を行いました。  計2回の現地調査の結果、ニッケル開発現場の敷地内を通って流下するトグポン川の河川水に関し、引き続き、顕著な六価クロム汚染(約0.15〜 0.3mg/L。日本の公共用水域の環境基準0.05mg/Lの3〜 6倍)が観測されました。また、赤褐色のヘドロ状の物質がトグポン川からツバ川入江に流入し、大量に堆積している実態が明らかとなり、同水域の生態系に大きな影響を及ぼしている可能性も示唆されました。  本調査の結果については、ホームページ等で発表(和文・英文)し、広く一般に共有した他、住友金属鉱山、また公的機関等に対し、会合で直接提示し、水質汚染の原因解明や赤褐色のヘドロの環境負荷の実態に関する調査など、早急かつ適切な対策を求めました。  こうした提言活動の結果、現在、事業者による六価クロム流出の軽減対策、および、フィリピン政府機関による水質分析が予定されています。今後、これらの検証のため、また、事業者のより積極的な対応を求めていくためにも、現地調査(水質分析)を継続して実施していく予定です。

その他/備考


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