水俣病センター相思社 |
2009/7/26京都での成果発表会配布資料[pdf206kb] 2009/7/26京都での成果発表会配布資料[pdf206kb] 2009/7/26京都での成果発表会配布資料[pdf206kb] 2009/7/26京都での成果発表会配布資料[pdf206kb] |
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遠藤 邦夫 さん | ||
http://www.soshisha.org | ||
50万円 |
処分場予定地航空写真
事業計画概要図
埋め立て終了時の予想断面図。強風化した安山岩溶岩台地は、処分場には不適地であることは言うまでもない。自重による不等沈下は遮水シートを破損させるばかりでなく、処分場周辺の斜面の崩壊を助長する。また用地東部の大森地区には生活に使われている湧水があり、シート破損は河川水ばかりでなくまず湧水を汚染することになる。元の稜線から30m 以上の高さに積み上げられた産廃は、降雨・台風・地震等による崩落の危険がある。
初めての調査活動
2007年12月の助成申込書から
本研究のねらいは、産廃処分場建設予定地周辺およびその下流域における環境について調査し、市民の立場から、処分場建設がもたらす自然環境および生活環境への影響を正しく予測することである。
水俣市の水源である湯出川の上流に、民間の廃棄物処理業者により203万・3という日本最大規模の管理型産業廃棄物最終処分場の建設が計画されている。市民の間からは、飲み水の汚染や水源の枯渇、工事による斜面の崩落、トラックによる騒音・振動被害、煤塵の飛散による大気汚染、農産物の汚染等について不安の声が上がっている。
現在、熊本県の条例による環境影響評価の準備書手続きが進行中である。事業者のアセス調査は「環境への影響は少ない」という結論を導くための、極めて作為的なものであった。2007年までに我々が行った水質・地質・野鳥等の調査により、事業者の安全性の主張の根拠となる調査結果の多くが否定されたが、事業者は説明責任を果たさず強行に押し切る姿勢を変えていない。今後も、事業者と許認可権を持つ熊本県の前に、危険性を示す調査結果をより一層積み上げていく必要がある。
2008年度はこれまでの調査を踏まえ、交通・気象・動物等の分野で調査を行いたい。
2008年9月の中間報告から
IWD東亜熊本が産廃処分場計画から撤退したことを受けて、水俣の経験を普遍化した「産廃阻止ハンドブック」を作成して、産廃反対運動の主体が利用可能な形にする。水俣は全国の人々の応援や高木基金の助成を受けて、処分場計画を撤退させることができたので、その積極的なお礼の形としてこの仕事を設定した。
通常環境影響評価はアセスメントをもじってアワスメントと揶揄されている。環境影響評価は、事業者が計画地周辺の環境影響を予測して、その予測を裏付ける調査・検討を行い、環境影響を評価するものである。いわばこの過程で事業者は、評価の根拠となる調査・検討を実行し、その検討過程と定量化された数字等を提出してくることになる。水俣の経験からはアセスメントは事業者が自分で自分の首を絞める仕組みに他ならないことを示している。
産廃処分場建設反対の根拠となりうるのはは、第一にその安全性に関わるものであろう。処分場は安全ではない=危険の蓋然性が高い。しかし、この場合の「安全性」は、あくまでも廃掃法や各地方自治体の環境アセス法に規定された「安全性」であって、実態に沿ったな安全性議論ではない。このことが反対運動を絶対反対と条件闘争に分岐させることになるが、運動として重要なことは絶対反対と条件闘争を両立させて動かしていくことである。目的は処分場計画を撤退に追い込むことである。現在の技術で実質的に「安全な」施設を作ることは不可能である。それ故このハンドブックは環境影響評価段階での安全性を基準として、事業者の評価に至る検討・調査で出される定量化された数字から、安全という評価の根拠を突き崩す論理を提示することである。そこに至る運動過程での数々の課題や問題点を洗い出して整理して、これからの産廃反対運動展開のためのツールとしての産廃阻止ハンドブックを作成できる。
すでにいくつかの反対運動のためのハンドブックがあるが、環境アセス制度が始まったのは比較的新しいことから、アセスへの批判を中心としたハンドブックを新たに作成することで、今後の反対運動の構築に役立ててもらえるようにしたい。
2009年5月の完了報告から
2008年6月、産廃事業者IWD東亜熊本が撤退した。高木基金助成によって水質調査・地質調査・風力調査・交通調査を行い、その成果は反対運動に論理的基礎を与えた。また高木基金のネットワークによって、専門的知識を持つ人々の協力を得ることができた。高木基金に改めて感謝したい。
産廃反対運動の本当の困難は、対外的な事業者・行政・賛成派がもたらすモノは課題として対応しやすいが、内部的な結束のゆらぎや論理構築・行動方針の相違による対立の深刻化であろう。それ故運動を組織する人々は、表面的な動きにとらわれるのではなく、自分たちにできること・できていないことを把握することが重要である。
水俣はわずか5年間ではあるが、経験したことを文字化・資料化することによって、運動の現状や欠点把握に利用してもらいたいと考えた。水俣の個別的経験から普遍性を抽出して、産廃処分場反対運動に役立つマニュアル的資料を作成することにした。
マニュアルの基本構造は、以下の通り。
1.産廃反対運動の組み立て方
2.産廃反対の基本となる「安全性の考え方」の今日的水準を示す
3.環境影響評価段階での反対の論理構築と実際例の提示
4.IWD東亜熊本の産廃処分場関連の資料
「水俣産廃阻止!市民会議」が作成した記録誌を表の経験とすれば、このマニュアルは運動の裏方の経験をまとめたモノである。
助成決定当初は、「水俣市における廃棄物最終処分場建設計画の環境影響に関する調査研究」というテーマでしたが、処分場事業者が撤退したため変更しました。