長島の自然を守る会 | ||
高島 美登里 さん | ||
http://www2.ocn.ne.jp/~haguman/nagasima.htm | ||
100万円 |
山口県上関原発周辺の世界的にも貴重な自然環境保護への地域住民参加をめざす取り組み。
中間報告から
2002年3月
第10回自然の教室(3月31日)
●第10回自然の教室を開催した。
平野義明(千葉大学)氏からウミウシの生態・見分け方を講義してもらいました。
また、福田宏(岡山大学)氏から、今まで田浦で見つかった、22種類のウミウシについて簡単な説明がありました。
アマクサウミコチョウ、モンガラキセワタ、ミドリアマモウミウシ、ヒロウミウシ、シシオウミウシ属の1種、ハナデンシャ、タテジマウミウシ、サクラウミウシ、リュウグウウミウシなど
IWC(国際捕鯨委員会)総会が下関市で開催されました。
長島の自然を守る会が「上関のスナメリを守ろう!キャンペーンツアー」を実施
IWC(国際捕鯨委員会)総会会場(下関市)〜宇部市〜防府市〜徳山市〜上関町まで街頭宣伝を行いました。
2002年4月 絵本「のんたとスナメリの海」発刊「長島の自然を守る会」の委嘱で制作された「のんたとスナメリの海」(キム・ファン著)が刊行されました。
2002年5月
1.長島の生物調査(春季)・自然の教室(5月5日〜6日)
●春季生物調査・第11回自然の教室を開催しました。
向井宏・西濱士郎・加藤真・野間直彦・安渓遊地・安渓貴子・福田宏氏などの研究者・学生22名と長島の自然を守る会・環瀬戸内海会議・山口貝類研究談話会・グリンピースジャパンの呼びかけで集まった愛好家を含め、総勢85名が参加しました。
2.IWC総会科学委員会小型鯨類分科会のスナメリ視察
●海外研究者ら24名が粕谷俊雄氏(帝京科学大学)の紹介で光市〜上関までを視察しました。
長島の自然を守る会から案内役として高島美登里代表が同行しました。
日弁連が「上関原発建設計画に対する意見書」提出
●日本弁護士連合会が「上関原発建設計画に対する意見書」を中国電力・上関町・山口県に提出しました。
特に公害対策環境保全委員会自然保護部会は「同地の生態系上の重要性並びに同生態系の脆弱姓を考えれば原発建設計画に重大な疑問がある」旨を明らかにしました。
神社本庁・環境省申し入れ
●神社本庁に「四代八幡宮神社地(上関原子力発電所建設予定地)を手付かずのまま保存する要望書」を提出しました。
また、環境省に2001年〜2002年調査で確認された希少海生生物を報告し、特に原発埋め立て予定地内で確認されたヤシマイシン近似種について、アセスメントの不備を指摘し、事業者への指導を要望しました。
2002年6月 第11回自然の学校
●2002年6月2日に第11回自然の学校を開催しました。
●スナメリ講座:指導*粕谷俊雄氏(帝京科学大学)の講演のあと、海上でのスナメリウォッチングツアーを行いました。
2002年8月 第12回自然の学校・夏季調査
●2002年8月3日に第12回自然の学校・夏季調査を実施しました。
安渓遊地、安渓貴子氏などの研究者と長島の自然を守る会会員を含め16名が参加しました。
2002年10月 第13回自然の学校・秋季調査
2002年10月12日〜13日に第13回自然の学校・秋季調査を実施しました。
安渓遊地・福田宏氏ら研究者・学生参加者7名と長島の自然を守る会の会員を含め16名が参加しました。
2002年12月山口県立大学環境学講座で講演
●山口県立大学環境学講座に高島美登里代表が非常勤講師として招かれ、「自然の声に聞く〜上関原発予定地“長島”は究極の楽園〜」という演題で講演しました。
2003年3月 スナメリ網代漁取材(2003年3月23日)
●広島県竹原市のスナメリ網代漁の記録を残すため、ビデオ取材をしました。
*加藤真(京都大学)、キム・ファン(絵本作家)、会員など16名が参加しました。
*スナメリ回遊水面天然記念物指定の碑視察・撮影
*阿波島のスナメリを祀った祠を視察・撮影
*忠海高校「スナメリ調査隊」のメンバーと交流
*浜岡明次さん(文献ではスナメリ漁を発明した人の子孫、本人はご存知なかった)の体験談を取材
*「海と島の歴史資料館」視察
*青少年育成事業の視察
2003年4月 ビデオ「せとうちスナメリ物語」・「長島の自然」制作作業開始
上関原発予定地の神社地(炉心部分)売却に反対されていた宮司が解任されました。
中国電力が早急に詳細調査着手を表明
●計画に反対する宮司が3月に解任され、神社地が中電に売却される可能性が高まったとし、神社地を取得後、すぐ詳細調査に入るとの意向を表明しました。
上関原発予定地の四代地区共有地代替契約無効訴訟で入会権が認められました
上関町を含む熊毛郡区で反原発県会議員が当選
上関町長選で反対派山戸貞氏が推進派加納氏に敗れました
上関町長選推進派運動員が逮捕されました
2003年5月神社本庁申し入れ
●神社本庁に長島の自然を守る会として「四代八幡宮神社地を自然環境・生態系保護のため保存し売却されないよう求める申し入れ」を行いました。
長島の自然環境及び生態系調査研究・調査研究の成果
★第10回自然の教室(3月31日)
●観察会の結果は、9種もウミウシが見つかり、そのうち2種マツカサウミウシの未同定種とフジエラウミウシは山口県で初の発見だそうです。他はキヌハダウミウシ、マダラウミウシ、オカダウミウシ、アリモウミウシ、ヒロウミウシ、イソウミウシ近似種、アメフラシです。また、このうち5種は田浦での新しい発見で、結局、いままでになんとこの狭い田浦で、27種もウミウシが見つかったことになります。福田さんが希少な微小貝のイソコハクガイをまた1個見つけられました。
★長島の生物調査(春季)・自然の教室(5月5日〜6日)
<潜水班>指導:福田宏さん(岡山大学)
*新種と見られるウミウシのウミコチョウを発見。ナメクジウオも昨年同様確認された。
<植物班>指導:安渓貴子さん(山口大学)安渓遊地さん(山口県立大学)野間直彦さん(滋賀県立大学)加藤真さん(京都大学)
*植物班は25人が参加して神社用地に隣接する森を調べました。立派なタブノキなどがあり、絶滅危惧種に指定されている花も咲いていました。
<潮間帯班>指導:向井宏さん(北海道大学)西濱士郎さん、福田宏さん(岡山大学)
*埋め立て予定地のタイドプールでヤシマイシン近似種確認。同じ場所で同じく希少なイソコハクガイ・ナギツボも確認されました。
<鳥類班>指導:山本尚佳さん、岡野友紀さん(日本野鳥の会)
*鼻繰島の2羽のハヤブサを確認。その他キビタキ・センダイムシクイ・ヤブサメを確認。
★IWC総会科学委員会小型鯨類分科会のスナメリ視察(2002年5月5日)
スナメリを5〜6群、約20数頭確認したほか、船上から生物調査の模様を視察した。参加した米デユーク大(ノースカロライナ州)のアンデイー・リード教授は「貴重な自然が残っている特別な場所」と感想を話しました。
★第11回自然の学校(2002年6月2日)
●粕谷俊雄(帝京科学大学)講演
【1】スナメリの生態系【2】瀬戸内海のスナメリが最近20年間で激減している【3】上関を含む周防灘西部は比較的生息頭数が多い【4】中国電力の上関原発にかかるアセスメントでは他の海域にも生息しており、泳遊域が広範囲であるから、埋め立て・温排水の影響が少ないとしているが、他の海域のスナメリの生息条件も乱し、ひいては全体の生態系のバランスを崩す・・・等を学びました。
●その後、参加者はスナメリの海上視察を行い、長島と牛島の間で数頭のスナメリを2〜3回ほとんどの人がみることができました。
★第12回自然の学校・夏季調査(2002年8月3日)
活動成果としてはコモンウミウシ・マダラウミウシ・ババガセ等希少海生生物を確認しました。
コモンウミウシ(瀬戸内海新記録種?) マダラウミウシ
★第13回自然の学校・秋季調査
●活動成果としては潮の条件が悪く、潮間帯の調査があまりできなかったが、専門家の指導により超微小貝類の観察方法などを学びました。
●野鳥班は、28種の野鳥、ヒヨドリの渡り、ミサゴを確認した。
★スナメリ網代漁取材(2003年3月23日)
● 文献資料では1807年、忠海村の浜岡栄作によりスナメリ網代漁が考案されました。スナメリに追われるイカナゴを餌にしようと鯛が浮上してきた処に、仕掛けを入れ、捕獲する方法です。
●聞き取り調査結果
*日本では忠海村の10数家族のみが認可された非常に珍しい漁法です。
*漁は2月〜5月にかけ行われ、産卵前のサクラ鯛は高く売れたことから、富をもたらしてくれる神様として、阿波島にスナメリを祀った祠を建て、漁の開始にあたってはお神酒を供え、参拝しました。
*スナメリは最盛期に100〜150頭の群れで回遊していました。
*1960年代、動力船が航行するようになってから、スナメリが激減し、この漁法も廃れました。現在、忠海町で経験者は2名のみであり、ビデオ取材は初の試みです。
*この海域は大正5年にスナメリ回遊天然記念水面に指定されました。当時、鯨油業者がスナメリを銃で捕獲したことから、阿波島周辺海域1.5?を天然記念回遊水面とし、スナメリ網代漁従事者の漁業権を守る目的で指定されました。
*加藤真(京都大学)氏はこの海域にはイカナゴが多く生息する州が多くあったが、1970年代からの海砂採取で海底の様相が激変したこともスナメリ激減の一因であろうと語りました。
各分野の調査報告
★長島・田ノ浦での植生調査の結果の報告
長島・田ノ浦の植生
上関町の長島は、スダジイ、タブノキ、ヤブニッケイなどの常緑樹林と、コナラやアベマキの落葉樹林、モウソウチクをはじめとする竹林が分布しています。集落は海岸付近にかたまってあり、水田と畑、耕作放棄地が点在します。海岸は岩場が多く、常緑樹の海岸林が直接海にせまり、天然の岩礁海岸が続きます。コンクリート護岸は非常に少ない。
建設予定地の田ノ浦は、長さ約300mの長島には稀な砂浜があり、ハマエンドウ、ハマヒルガオ、ハマナタマメ等のつる性草本、ハマツメクサ、ハマナデシコ、ツルナ、オカヒジキなど砂浜に特有な草本が見られます。スナビキソウにはアサギマダラが、ハマダイコンの群生地には、ビロウドツリアブやケブカハナバチが訪花します。海岸林が砂浜に接するところには、海側にヒゲスゲ、内陸側にアオスゲや、ヒトモトススキの群落が谷内坊主のように盛り上がって土と水を溜めています。ボタンボウフウやクサスギカズラ、イワタイゲキなどが生育していて後方の岩が多い立地の海岸林につづきます。
田ノ浦の10年以上前に耕作が放棄された水田跡は、ヨシやヒメガマ、ハンゲショウの生育する湿地草原になり、トキワススキの群落も見えます。護岸のない岩礁海岸にはトベラやハマヒサカキ、シャリンバイなどの海岸林があります。その奥には、もくもくとした樹冠の照葉樹林が水田あとを取り囲むように田ノ浦を抱いています。
予定地内の海岸が少し突き出た所にある小島とその対岸の崖には、天然のビャクシン群落があります。天然のビャクシン群落は、日本列島では現在、開発と乱獲によって、十分な生態系の調査・研究がおこなわれないまま著しく少なくなっています。我々の調査結果から、この小島はビャクシンの健全な年齢構成からなる群落であることがあきらかになりました(野間・安渓、2001)。
田ノ浦の照葉樹林
山すそはかつての農地で、現在はトベラやアカメガシワ、ヤダケが密生した若い二次林です。その上部は常緑広葉樹林と、薪炭林の面影を残したアベマキ・コナラ林、稜線はアカマツ林からなっています。
常緑広葉樹林は樹冠が高く、成熟した森林の景観を示して中は暗くて林床植物が少ない。林床には、シュンラン、オオバノトンボソウ、ミヤマウズラなどのランの仲間や、ユリ科のコヤブラン、ナガバジャノヒゲなどが点々と落葉の間に分布しています。所々にタヌキの溜め糞が山をなし、そこに木々の実生が密生しています。
海に面した稜線の森は明るく乾燥していて樹高は3〜5mと低くなります。木本の種類が多く、潅木状になり密生しています。コナラやシャシャンボの葉が厚く丸くなり、潮風の影響がみられます。草本層に最近分布が減っているツクシママコナが群生しています。
やや内陸にはアカマツ、コナラ、アベマキが生育するいわゆる里山の景観が続いています。人手が入らなくなって常緑樹が増えてきていますが、キンラン、ギンランやヒトリシズカ、コバノタツナミソウなど、かつて郊外の山々を歩けばあたりまえに見られたが今は少なくなった草花が咲いています。また、分布が本来限られているヤマハコベやジュウニヒトエなどが道沿いに咲いていて、いずれも希少な分布地です。
タブノキの森
田ノ浦の水田跡の南側の谷は、神社用地をふくみ「地形改変区域」と名づけられ山が削られ埋め立てられる場所にあたっています。ここには直径50cm近い大きい木が多い。樹冠が高く、林内が暗くて下層木がすくなく、極相に近い常緑広葉樹林の景観をもっています。太いタブノキ、カゴノキやモチノキも見られます。
調査地と方法
2002年5月と7月の植生調査では、2001年に調査したクロキ、カゴノキ、ヤブニッケイからなる照葉樹林の北側にあるタブノキを中心とした森林に、25m×25mの方形区を設置しました。
南向きで傾斜は平均して30度を越えています。高さ130cm以上の木本について、130cmの高さでの直径(胸高直径)と樹高を測りました。また調査地内に1m×1mの方形区をおいて林床の植物についても出現種とその数を記録しました。
調査結果については、現在とりまとめ中ですが、樹冠を覆うのはタブノキの他にクロキ、カゴノキ、ヤブニッケイ、ヒメユズリハなどの常緑樹であり、亜高木層には上記の樹種のほかに常緑樹のシロダモ、カクレミノなどが見られます。年中林床が暗いので低木や草本層が少ない。しかしヒサカキ、ネズミモチ、モッコク、またタブノキやヒメユズリハの稚樹や実生が多く見られます。各層にタブノキが出現していて、他地域いきのタブノキ林とは異なる特徴が見られます。
2001年度の調査結果から(安渓・野間、2001)、クロキ・カゴノキ・ヤブニッケイ・ヒメユズリハを主な構成樹種とする群落は、山口県ではタブノキ群落の極相林に近いものである(塩見ら、1994)ことが明らかになっていましたが、今回、タブノキそのものを優占種とする林分が見つかったことで、その裏付けにもなりました。
この田ノ浦の森は、人為が加えられた森林であったが、長年人手が入らなかった結果、極相林に近づきつつある森林と位置づけられよう。
上関町には山口県周防部の沿海地の極相林に近い樹林として、蒲井八幡宮が県の天然記念物に指定され(南、1988)、白井田八幡宮が、山口県の自然記念物に指定されています。これらは神社の杜として守られてきた群落です。
山口県ではこういった極相林に近いかろうじて残された社寺林を、たとえ小面積でも自然記念物として指定し、その保全をめざしている例が多いです。ここ田ノ浦の照葉樹林はその質からも面積からも当然、指定されてしかるべきものでした(ただし、指定にあたっては関係市町村長の意見、縦覧とその後の住民及び利害関係人の意見書の提出、公聴会などの手続きが必要です)。
きわだって高い生物多様性をもつ田ノ浦の海は、それを取り巻く森と湿地の豊かな植生によって守られてきたといえよう。植生の回復から明らかなように、農薬や除草剤、生活廃水によっても守られてきたわけです。
引用文献
安渓貴子・野間直彦2001 長島・田ノ浦の海をはぐくんできた森 長島の自然(日本生態学会中国四国地区会報)59:36-40
塩見隆行・多賀谷三枝子・松井茂生,1994秋吉台地獄台ブッシュの植生.山口生物,21:68
野間直彦・安渓貴子、2001長島の海岸崖地のビャクシン群落の構造、長島の自然(日本生態学会中国四国地区会報)59:41-44
南敦,1988 上関町史第三章植物、上関町史、上関町史編纂委員会編
★野鳥班
●調査場所
熊毛郡上関町四代 四代地区人口(本線分岐)から田浦海岸まで
●調査方法
上記道路(ライン)上を一定のスピードで歩行し、出現鳥種を全てを記録。
調査自体が「自然観察会」を兼ねており、調査担当者が参加者に説明や解説をしりする時間も含まれ、厳密なラインセンサスになっていません。とはいえ、出現鳥については可能な限り厳密に記録しました。
●調査日時 2002年5月5日 (日)10:00〜13:15 天候 晴れ
●調査者 山本尚佳、嶋田淑子
●調査結果
13科17種 109羽を記録しました。
種名を出現順に列挙すると、ウグイス、メジロ、ヒヨドリ、カワラヒワ、アオサギ、ホオジロ、ハシブトガラスシジュウガラ、トビ、キジバト、センダイムシクイ、キビタキ、ウミネコ、コゲラ、ヤマガラ、ヤプサメ、ハヤブサ
●調査日時 2002年5月6日(月)8:30〜11:25
●天候 曇り(時々小雨)
●調査者 山本尚佳
●調査結果
14科17種 138羽を記録しました。
種名を出現順に列挙すると、ウグイス、シジュウガラ、トビ、ホオジロ、ウミネコ、ヒヨドリ、カラスsp、カワラヒワ、メジロ、ツバメ、コゲラ、キビタキ、キジバト、ヤブサメ、ヤマガラ、ハヤブサ、アオサギ
●調査概要
5月5日、カワラヒワの幼鳥を確認、近くで繁殖したものと思われます。また、シジュウカラが農道のカーブミラーのポールに出入り、巣材(コケ類)を運ぶのも目撃されました。
5月6日には、ヒヨドリ(30+)の群れも観察され、春の渡りのコースになっているようです。
夏鳥のセンダイムシクイ、ヤブサメ、キビタキについては、例年この時期に観されるが、繁殖の可能性については不明。
*参考までに、過去の記録から上記の記録種意外で同調査で同時期に観察された種を上げておきます。
*2000年5月5日
オオルリ、オオヨシキリ、クロサギ、キアシシギ、ハチクマ
*2001年5月6日
*ウミウ、ヒメウ、セグロカモメ、サシバ、イソヒヨドリ
●調査日時 2002年10月12日(土)10:40〜12:15
●天候 晴
●調査者 山本尚佳
●調査結果
14科 18種 294羽を記録しました。
種名を出現順に列挙すると
ヒヨドリ、メジロ、カラスsp、ノビタキ、ホオジロ、トビ、モズ、アオサギ、シジュウカラ、ツグミsp(シロハラ?)、キジバト、ウグイス、カワラヒワ、アオゲラ、ヤマガラ、コサメビタキ、タカsp(ハイタカ属)、ジョウビタキ
調査後、田ノ浦にて、ノスリ、ヒクイナ、ミサゴを記録。(計15科22種)
●調査概要
季節的に渡りのシーズンであり、特にヒヨドリの個体数が206羽と多かった。
調査開始時間の問題や調査地の見通し具合などから大群は観察されなかったが、小群(20〜30羽)で海岸線を山伝いにひっきりなしに移動していくのが観察されました。(なお、当日の集合場所の蒲井港では10時前後頃、上空を数百羽近い群れが幾群か観察されました。)その他、渡り鳥ではノビタキ、コサメビタキは通過中(暫くは滞在)のもの、ツグミsp、ジョウビタキは冬鳥、タカsp、ノスリについては通過ないし冬鳥である。定番のハヤブサが観察されなかったのは残念でした。
●ハヤブサの繁殖状況について
鼻繰島をテリトリーにしているハヤブサの番いの繁殖活動は、毎年、交尾、抱卵までは行くものの、何らかの原因で中断し、再度繁殖活動に入るようだが、結局ヒナを孵すまでに至っていない。
繁殖がうまく行かない原因については、いろいろ言われているが、番いそのものの問題や環境汚染の影響とかは簡単に調べることが出来ないものの、外からの観察からは少なくとも繁殖場所に問題(巣の位置、カラスや釣り人の影響など)があるようで、それを打開しない限り、改善は見込めないだろう。情報を総合し、専門家の意見も聞き、積極的な保護策を県当局にも要望していく必要があります。
対外的な発表実績
2002年12月
山口県立大学環境学講座
【1】長島の自然環境・生態系が素晴らしく、究極の楽園と呼ぶに相応しい価値を有しています。
【2】同地は上関原発計画の予定地で破壊の危険に直面しています。
【3】推進派は過疎化・産業衰退・人口減の中で、原発の金と利権による一時的な繁栄に翻弄されています。
【4】自然と共生しつつ、地域活性化を実現することが肝要です。
2002年 原子力資料情報室通信 長島の自然と上関原発計画の現状
2002年「環境と正義」長島の自然と上関原発計画の現状
2002年 日本消費者連盟機関紙 長島の自然と上関原発計画の現状
今後の展望
1.上関原発計画を巡る情勢は予定地炉心部分の神社地売却を拒否していた宮司の解任により、逼迫しています。
特に中国電力は安全審査のための詳細調査に、神社地取得後、できるだけ早期に着手したい意向を明らかにしています。
調査のための森林伐採やボーリング掘削による騒音、海水汚濁など長島の自然環境・生態系が甚大なダメージを蒙ることは明白です。
【1】これまでの調査成果を踏まえ、「生態学会中国四国地区会報No.2」の刊行を早急に行えるよう、生態学会中国四国地区会と連携を強め、学問的な成果を結実させます。
【2】山口県レッド・データ・ブック編集の際、不採用となった貝類版原稿には長島で確認された希少種が多数含まれています。生態学会中国四国地区会・環瀬戸内海会議等と連携し、市民版レッド・データ・ブックを刊行し、同地の改変に警鐘を発します。
【3】ビデオ「長島の自然」「せとうちスナメリ物語」を普及させ、広く市民から保全要望の声を行政・中国電力に集中します。
2.暦年行ってきた調査をより幅広い分野で展開します。
【1】海藻・ナメクジウオ・昆虫・哺乳動物など、未実施の分野で専門家に調査を依頼し、生態の科学的な把握に努めると共に、市民参加者の調査・同定能力を高めます。
【2】詳細調査に入られるという最悪の場合を想定し、これまで以上の頻度で調査活動を行います。
3.基金で購入した望遠鏡・実体顕微鏡を田ノ浦に建設された「人々の集いの家」に常設し、観察・調査活動に役立てます。
4.藻デザイン研究所と連携し、瀬戸内海における海藻おしばアートの拠点として、
(ア)環境問題とアートを結合させ、幅広い市民の関心を呼び起こします。
(イ)海藻おしばのしおり・葉書などの作成を通じ、地域活性化の一助となるようにします。
5.若手会員の長島への定住など、生物多様性センター建設の具体的な準備作業に入ります。