核の「中間貯蔵施設」はいらない!下北の会 |
調査研究の概況[pdf275kb] 調査研究の概況[pdf275kb] 調査研究の概況[pdf275kb] 調査研究の概況[pdf275kb] |
|
野坂 庸子 さん | ||
30万円 |
2002年12月の助成申込書から
国は、核燃料サイクルの一環として、使用済み燃料の大規模集中貯蔵施設建設の方針を打ち出していますが、むつ市がその候補地とされ、市は、「海外先進地視察研修」として、市議会議員をスイス・ドイツなどの貯蔵施設に派遣して、中間貯蔵施設建設に向けた流れを作ろうとしています。
この研究では、公表されている視察の報告書を批判的に検証するとともに、参加議員への対面調査やアンケートも行ない、報告書の内容を掘り下げます。
また、専門的な内容については、原子力資料情報室の応援を得て、科学的に追求します。
同時に、視察の経費についても情報公開を利用して調査し、その正当性を検証します。
それを基に、中間貯蔵施設に関するリーフレットを作成し、むつ市全戸へ配布するとともに、中間貯蔵施設建設の動きの出ている他の地域の市民団体へもその結果を知らせ、共同して、使用済み核燃料の処分についての議論を巻き起こしたい。
中間報告から
2001年の、むつ市議会議員12名による「ドイツ・スイスの使用済み核燃料中間貯蔵施設の視察」に関する報告書の検討・分析を行い、ドイツとスイスの実態を明らかにしその問題点を追及すると共に、立地点周辺に暮らす人々の生活や経済などへの影響を調査します。そして、その調査結果をむつ市民に伝えていくことが、私たちの課題です。
4月から、ドイツ・スイスへの視察報告書の全文を基にその検討を行い、疑問点を各議員と市当局へ提出した。市からは回答をもらえたが、議員からは2名のみの回答だけでした。未回答者には再度質問をしているが、8月末現在、回答はありません。回答を引き続き要請しています。
議員が会見した人たちは全て施設関係者か行政関係者なので、情報が偏っていると思われます。客観的事実を知るには、付近で生活をする一般市民の実際の感想や意見が必要なことから、施設周辺の住民(施設や行政関係者ではない)にも連絡をとりましたが未だ応答がないので、新たに連絡がとれるよう、検討中です。
報告書の疑問点はまだ解決していませんが、報告書に記載されたことのみを検討した結果、この報告書は、施設の一部分一面のみの報告であり、経済的効果や地域の活性化なども行政面からの見解にすぎないこと、また、質問への回答が全く深められていないことなど、つまり、議員たちの視察と報告は、事業者や行政の出している説明パンフレット以上の内容とはなっていないことがわかりました。このように、市民への報告と言いつつ、実際には見学感想文以上のものではないことと、私たちは判断をしました。これでは、既設の海外中間貯蔵施設の実情とそのもたらす影響をなどの情報を市民に伝えることにはならないし、議員の視察は、何の意味も持たないのではないでしょうか。現時点での、こうした判断から、急きょ、私たち市民の立場で、中間貯蔵施設の実態を伝えるべく市民向けのリーフレットを作成しました。全戸配布を目指して配布中です。
しかし、6月30日から7月31日まで、住民投票条例制定のための署名期間であったこと、その後は条例案可決を求めての活動のため、検討活動を一次中断していることをお断りしておきます。
調査研究・研修の進捗状況・計画の変更などについての特記事項
中間貯蔵施・誘致についての、住民投票制定署名活動とその後の実現に向けての活動のために、この調査が予定通り進められていないのが現状です。
私たちは、核燃サイクルの中での、中間貯蔵施設の位置を充分に考え、その誘致を阻止することでサイクルの輪を断ち切り、脱原発への具体的一歩となることを目指すものです。この為、実際の運動を第一義として、高木基金助成テーマを進めています。
完了報告から
ドイツとスイスの中間貯蔵施設先進地視察に参加した12名の市議会議員の報告書から、既に貯蔵を開始しているドイツとスイスでの貯蔵実態や、周辺への影響、周辺住民の受け取り方などを汲み取ろうとしたが、事業者の主張する立地に伴う利点と安全性を鵜呑みにし復唱するだけであり、事業主体である東京電力の出しているパンフレット以上の内容ではありませんでした。私たち市民は、ここからは何も得ることはありません。
それではらちがあかないので、詳しい内容を知るために各議員宛の質問を計3回提出しましたが、参加12名中10名の議員からの回答は届きませんでした。回答のあった2名の文書も、全く回答とは言えない内容でした。つまり、市民の代表として事実を市民に伝えるための視察のはずが、実際にはただ現地を訪れただけで、研修・視察というのはあくまでも建前だったようです。
また、本来であれば、むつ市行政当局が判断材料として市民に様々な情報を提供しなければならないのですが、それもありません。最初から誘致の姿勢をとっているために、市側から提供される情報は常に一方的な宣伝ばかりです。
以上のように、市当局からの情報や、ドイツ(ゴアレーベン)とスイス(ヴユーレンリンゲン)の施設視察を行ったむつ市議12名の報告書からは何も得ることができないので、約5万(戸数は約22000戸)のむつ市民に中間貯蔵施設の実態を知らせるために、わかりやすい漫画リーフレットを作成し全戸配布を行うことに決めました。誘致に賛成か反対かを問う前に判断材料である事実を全ての市民に広く知らせること、それが、私たち「核の『中間貯蔵施設』はいらない!下北の会」のまずやるべきことだと思いました。
原子力の専門家のアドバイスなども得て完成させたリーフレットは、03年7月半ばから市内全域の個別配布を始めました。地図を見ながら一軒一軒を回り厳寒期の配布活動も経て、2004年5月末に全戸配布を完了しました。
私たちのリーフレットには、中間貯蔵施設の関するできるだけ多くの客観的情報を載せているので、今まで知らなかったことがわかったという感想や、マイナス面もよくわかるとの意見が多く寄せられています。また漫画なので見やすいし、馴染みやすい、理解しやすいと、概ね好評です。
漫画リーフレットを作成し市内全戸配布を行ったことで、今までよりもなお一層、中間貯蔵施設を受け入れるか否かの判断材料を、広く市民に提供できたことと思います。
今後の展望
ドイツの脱原発政策を研究している、東北大学大学院の青木聡子さんを招いての勉強会を7月4日に開くことにしています。この勉強会は県内の2つの市民グループとの共催として実施する予定でいます。
青木さんのお話からは、議員の報告書には全く書かれていなかったドイツの中間貯蔵施設の実態や周辺住民の様子などを、詳しく知ることができると思います。こうして得たことを、更に市民に広く伝えなければならないと考えています。
昨年夏に市長は中間貯蔵施設の誘致受け入れを表明しましたが、今後は緒手続きが必要であり、着工までにはまだ年月がかかります。その間に、中間貯蔵施設の問題点やその影響などを、原子力問題の専門家ではなく利害関係もない一市民の立場で捉えて、広く市民に提供していく予定です。誘致か否かの論議を、改めて巻き起こす材料となるようにしていきたい。